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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記
埒外の存在
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「くそっ! くそっ! なんで……っ!」
自身のまったく手加減のない攻撃をそよ風のように受け止めるアリシアに、ゴーディンは焦っていた。
自分は、魔法による防御さえ得られれば魔獣とでも互角に戦える。それがまるで通じない。
確かに、ゴクソツ内にも自分より強い者は何人もいる。けれど、その者達は明らかにそれに相応しい<雰囲気>を備えていた。なのに今、自分の目の前にいる女からはそんな雰囲気も空気感もまるで感じない。感じないのに……
『なんだよこいつはよ……!』
だが、ゴーディンは知らないのだ。人間の世界の範疇でいくら力自慢を誇っても、この世には、完全に<埒外の存在>というものがいるのだと。
彼が今までの人生で目にしてきたものは、たとえ魔獣であろうと魔法を使う者であろうと、所詮は人間の範疇でしかないのだ。
とは言え、この時点でのプレイヤーキャラクター自身も本来ならまだまだ<人間の範疇>ではあるのだが。
アリシア自身が、人間から見れば<埒外の存在>なのである。
遠巻きに二人の戦いを見守っている者達の間にも、恐怖、いや、畏怖が広がっていた。
『そろそろですか……』
十分に力の差を見せ付けたと判断し、すでに五本目となる<拾った剣>を投げ捨て、素手のままでゴーディンの戦斧の前に身を躍らせた。
「死ねええええっっ!!」
それを見たゴーディンが渾身の力を込めて戦斧を振り下ろす。
けれどアリシアはやはり平然としていた。彼女にとってはゴーディンの動きなど、スローモーション以下でしかないからだ。
戦斧が彼女の体に届く前にその間合いの内側に入ってしまう。これでは、ただの棍棒で殴りかかったのと変わらない。
もっとも、普通の人間が相手ならそれだけでも十分に命に関わることのはずなのだが。
しかし、アリシアは<普通の人間>ではない。
ゴーディンが振り回す戦斧の柄に触れて、瞬間、彼女自身が独楽のように猛スピードで回転した。
戦斧を巻き取るかのごとく。
と言うか、実際に巻き取ったのだ。
弾かれるようにゴーディンの手が戦斧の柄から離れてしまい、
「!?」
何事か?と思った彼が次に目にしたのは。自分が手にしていたはずの戦斧が、自身の顔面目掛けて迫ってくる光景だった。
わけも分からずそのような状況になり、ゴーディンは戦慄した。これまでの人生の中でも感じたことのないほどの恐怖だった。
いや、『初めて』ではなかったかもしれない。
何をやらかしたのかもはや自分でも覚えていないが、養父である狩人が鬼の形相で自分を殴り飛ばし、吹っ飛んだときにも同様の恐怖を感じたことが蘇ってくる。
それは一種の<走馬灯>であったのだろう。
自身のまったく手加減のない攻撃をそよ風のように受け止めるアリシアに、ゴーディンは焦っていた。
自分は、魔法による防御さえ得られれば魔獣とでも互角に戦える。それがまるで通じない。
確かに、ゴクソツ内にも自分より強い者は何人もいる。けれど、その者達は明らかにそれに相応しい<雰囲気>を備えていた。なのに今、自分の目の前にいる女からはそんな雰囲気も空気感もまるで感じない。感じないのに……
『なんだよこいつはよ……!』
だが、ゴーディンは知らないのだ。人間の世界の範疇でいくら力自慢を誇っても、この世には、完全に<埒外の存在>というものがいるのだと。
彼が今までの人生で目にしてきたものは、たとえ魔獣であろうと魔法を使う者であろうと、所詮は人間の範疇でしかないのだ。
とは言え、この時点でのプレイヤーキャラクター自身も本来ならまだまだ<人間の範疇>ではあるのだが。
アリシア自身が、人間から見れば<埒外の存在>なのである。
遠巻きに二人の戦いを見守っている者達の間にも、恐怖、いや、畏怖が広がっていた。
『そろそろですか……』
十分に力の差を見せ付けたと判断し、すでに五本目となる<拾った剣>を投げ捨て、素手のままでゴーディンの戦斧の前に身を躍らせた。
「死ねええええっっ!!」
それを見たゴーディンが渾身の力を込めて戦斧を振り下ろす。
けれどアリシアはやはり平然としていた。彼女にとってはゴーディンの動きなど、スローモーション以下でしかないからだ。
戦斧が彼女の体に届く前にその間合いの内側に入ってしまう。これでは、ただの棍棒で殴りかかったのと変わらない。
もっとも、普通の人間が相手ならそれだけでも十分に命に関わることのはずなのだが。
しかし、アリシアは<普通の人間>ではない。
ゴーディンが振り回す戦斧の柄に触れて、瞬間、彼女自身が独楽のように猛スピードで回転した。
戦斧を巻き取るかのごとく。
と言うか、実際に巻き取ったのだ。
弾かれるようにゴーディンの手が戦斧の柄から離れてしまい、
「!?」
何事か?と思った彼が次に目にしたのは。自分が手にしていたはずの戦斧が、自身の顔面目掛けて迫ってくる光景だった。
わけも分からずそのような状況になり、ゴーディンは戦慄した。これまでの人生の中でも感じたことのないほどの恐怖だった。
いや、『初めて』ではなかったかもしれない。
何をやらかしたのかもはや自分でも覚えていないが、養父である狩人が鬼の形相で自分を殴り飛ばし、吹っ飛んだときにも同様の恐怖を感じたことが蘇ってくる。
それは一種の<走馬灯>であったのだろう。
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