愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記

詳細な過去

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馬鹿にされたと感じたゴーディンが怒りに任せて戦斧を何度もアリシア目掛けて打ち付ける。

まるで暴風のようなそれにさえ、アリシアは怯まない。折れた剣がさらに折れて刀身が完全になくなると、戦斧を潜り抜けながら別の剣を拾い、やはりそれで受け止めて見せた。

もちろん、ただ力で強引に受け止めただけでは、戦斧自体の質量に加え、ゴーディン自身の体重、及び並の人間では避けることさえおぼつかないほどの速度による運動エネルギーを受け止めきれるはずもない。

ゆえにアリシアは、戦斧が剣に当たる瞬間は柔らかく受け止めて運動エネルギーを相殺した上で、質量がもたらす力については自身の膂力で支えたのである。

『運動エネルギーを相殺』という部分はアリシア自身のスキルで、それ以外はプレイヤーキャラクターが本来備えている力だ。

実際にはアリシアがその気になれば圧倒的な力によって一瞬で倒すこともできるものの、やはり<力の差>を強く印象付けるための<デモンストレーション>としてのそれだった。

実はこれも、次の展開を導くためのフラグである。

ここで圧倒的な力を見せれば見せるほど、途中に現れる<小ボス><中ボス>をスキップし、今のプレイヤーキャラクターに相応しいレベルの<中ボス>の登場を促すことになるのだ。

当然、ゴーディンはそんなことを知るはずもないので、自分が彼女を倒すつもりで挑みかかってくる。この時点で勝てる相手でないことは、自身を客観的に見られる者であれば容易く理解できるはずだが、残念ながらゴーディンはそうではなかった。

なお、このゴーディン自身にもここに至るまでの詳細な<過去>が設定されている。

彼は、生まれた時点での体重が五キロ近い<巨大児>として生まれ、その際、母親が出血多量で死亡している。

このことから彼は父親をはじめとした親族から<魔物>として疎まれ忌み嫌われて養育を拒否され、森に遺棄された。

しかしたまたま通りがかった狩人によって保護。その狩人も自分の子を亡くしており、『我が子が帰ってきた』と考えて育てた。

ただ、残念ながらその狩人も、<情>はあったものの<人間の育て方>については疎く、ただ力で圧倒し抑え付ければいいという考え方だった。そのため、幼いゴーディンは、

『強い者が弱い者を力で従わせることそのものが人間の世界だ』

と学び取ってしまい、しかも生来、常人離れした身体能力を持っていたことで、十二歳の時に怒りに任せて養父を殺害。自分がすでに大人さえ圧倒する力を持っていることを自覚して盗賊団に加わり、十五歳になる頃には当時の盗賊の頭目を殺害しボスの座に収まったりもした。

この後、<ゴクソツ>の幹部にその力を見出されて率いていた盗賊団ごと仲間に引き入れられたという経緯があったのだった。

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