愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記

信頼関係の構築

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『優しく誠意をもって接すれば分かってもらえる』

これもよく言われることだろうが、実はそれでは言葉が足りない。元より、コデットのような境遇の子供には、上辺の<優しさ>は、逆に不信感を募らせる結果にもなる可能性が高い。

また、媚を売って機嫌を取ろうとするのもむしろ不信感を助長し、

『こんな大人は利用するだけ利用してやればいい』

とさえ考えさせることも多いそうだ。

特にコデットは、教育は受けられていないものの頭の回転は速く利発な面があることはすぐに分かる。

そういう子供の場合は、敢えて大人と同等の扱いをした方が話がしやすいこともある。

具体的な条件を提示し、メリットを提供する代わりにこちらの要求を呑んでもらうのだ。

『あたたかい食事と安全な寝床を提供します。その代わり、働いてください』

最初にアリシアが言ったのもまさにそれだった。

現在は段階が進み、確実にコデットの側がメリットを享受できることを伝えることが望まれていた。彼女がそれを実感できなければ信頼関係の構築など、夢のまた夢である。

だからアリシアは、あたたかい食事と安全な寝床をまず彼女に提供する。

食堂での最初の食事は散々なものであったものの、彼女が条件を呑んでくれることが何より優先だったので、実際に食事を口にしてくれたのだから、まずはこれでいい。

<安全な寝床>についても、アリシアは彼女と一緒の部屋で寝た。

すると、コデットは、時折、うなされていることがあった。寝言でありながら、

「殺してやる!」

と叫んだこともある。

おそらく、夢の中で自身の過去を追体験しているのだろう。

そしてハッと目を覚ますこともあった。

そんな時、アリシアは言った。

「大丈夫。ここではあなたに危害を加える者はいません」

彼女のその言葉に、コデットが涙を浮かべる。けれど、次の瞬間には、

「け…っ!」

と吐き捨て、背を向けてシーツを頭から被った。

多くの人間が眉をひそめるようなその態度も、アリシアにとっては重要な情報だった。コデットの心が大きく揺さぶられている証拠だったからだ。

焦ってはいけない。結果を急いではいけない。性急にことを進めようとする大人達が少女をこんな風に育ててきたのだ。それと同じことをすればコデットはますます荒んでいくだろう。ここはVRアトラクションなので、決定的な破局には至らないように、<ご都合主義的な展開>によって<和解イベント>が発生し、

『仲間の絆が深まる』

ものの、アリシアはそれに頼らずにコデットの信頼を勝ち取ることを目指していたのだった。

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