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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記
闇焦がす獅子焔
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アリシアの斬撃は、普通の動物が相手であれば必殺の一撃だっただろう。けれど魔獣の鱗は固く、しかも幾重にも重なっていることでクッションの役目もするらしく、打撃としても十分な威力を発揮しなかったらしい。
なるほど、普通の人間ではどうすることもできないだろう。矢の雨を振らせたとしても、果たしてどこまで効果があったのか……
しかも、魔獣は自身の尻尾で体を支えて、丸太のような両足を同時に蹴り出した。ごお!という恐ろしい気配と共に繰り出されたそれを受けて、アリシアの体は小石のように吹っ飛ぶ。
その攻防を遠巻きに見ていた村人達の間にも、悲壮感が広がっていくのが分かる。
けれど、当のアリシアの表情に焦りの色はない。
「なるほど、こういう感じですか……」
小さな呟きは誰にも届かなかっただろうが、彼女の表情に気付いた者がいた。リティーレだ。
恐ろしい魔獣を前にしても、その途轍もない攻撃を受けても、まるで平然としているアリシアに、リティーレは不思議な安堵を覚えた。
「もうダメだ! 逃げよう……!」
諦めを口にする大人に向かって、少女は、
「大丈夫…! お姉ちゃんは勝つよ……!」
と応えた。
それが聞こえたわけではないだろうが、アリシアが剣を片手に持ち、もう片方の手をぐっと前に差し出した。
同時に、ピリリと空気が緊張する。目には見えない<流れ>が渦を巻きながらアリシアに集まっていくのが、見る者が見れば分かっただろう。
瞬間、その<流れ>はギュウッと圧縮され、たわむ。
「ゲエエアアアアアーッッ!!」
手をかざしたまま動かないアリシアに、魔獣が巨大な口を開けて喰らい付こうとする。
けれどアリシアは慌てることなく、たわめた<力>に点火した。
「闇焦がす獅子焔!!」
発した気勢がさらに力を増幅させ、それは、巨大な<火球>となり、魔獣を包んだ。
「熱っ!?」
何十メートルも離れているというのに、村人達が声を上げる。まるで小さな太陽のようなその火球の熱量がそれだけのものだったということだ。
「ゲエエッッ!?」
魔獣が一瞬、声を上げるものの、それはもはや断末魔でしかなかった。
火球から逃れようともがくが、その間にも体が焼け崩れていく。
逃れる術はない。
そうして、魔獣は跡形もなく燃え尽きたのだった。
で、冒頭のシーンへと繋がるということである。
村人達の熱烈な歓迎を受けて、アリシアは<村長>の自宅へと招かれた。小さいとはいえ迎賓館も兼ねているそこでテーブルに着いた彼女の前に、あっという間に無数の料理が並べられる。
『ははは……私、食べられないんですけどね……』
なるほど、普通の人間ではどうすることもできないだろう。矢の雨を振らせたとしても、果たしてどこまで効果があったのか……
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けれど、当のアリシアの表情に焦りの色はない。
「なるほど、こういう感じですか……」
小さな呟きは誰にも届かなかっただろうが、彼女の表情に気付いた者がいた。リティーレだ。
恐ろしい魔獣を前にしても、その途轍もない攻撃を受けても、まるで平然としているアリシアに、リティーレは不思議な安堵を覚えた。
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それが聞こえたわけではないだろうが、アリシアが剣を片手に持ち、もう片方の手をぐっと前に差し出した。
同時に、ピリリと空気が緊張する。目には見えない<流れ>が渦を巻きながらアリシアに集まっていくのが、見る者が見れば分かっただろう。
瞬間、その<流れ>はギュウッと圧縮され、たわむ。
「ゲエエアアアアアーッッ!!」
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けれどアリシアは慌てることなく、たわめた<力>に点火した。
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「熱っ!?」
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「ゲエエッッ!?」
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逃れる術はない。
そうして、魔獣は跡形もなく燃え尽きたのだった。
で、冒頭のシーンへと繋がるということである。
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