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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記
フラグ
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<虫>が全くいない状況に違和感は覚えつつも、それはあくまで標準的な<仕様>なので今回は気にしない。
そして、問題があるとされる<イベント>はずっと先だった。だからまずはそこまで進まないと話にならない。
実際には開発者権限でそこまでスキップも可能なものの、念の為、他にも異状がないかをアリシアにも確認してもらうことも目的の一つであり、また、<伏線>として紐付されたデータ類にも影響が出ている可能性もあり、それもまたチェックする必要もあった。
すると、その<伏線>の一つである、<ハートマーク模様の牛>がアリシアの視界に捉えられる。
実はその牛に近付いてイベントを起こすことが、件のイベントを発生させる<フラグ>となっているのだ。
「では、アリシアくん頼むよ」
ボイスチャットで宿角から指示を受け、
「分かりました」
アリシアは応えつつ<ハートマーク模様の牛>へと近付き、背中近くにあるハートマーク模様にそっと触れた。
と、瞬間、
「ウモオオオ~ッッ!!」
それまでは大人しく草を食んでいた牛が突然興奮。明らかに攻撃的な気配を放ちながら彼女を睨み、
「ごめんなさぁ~い!!」
声を上げながら逃げる彼女を猛然と追いかけてきた。
普通なら人間の足ではおよそ本気で走る牛からは逃れられないものの、この<ORE-TUEEE!>内のプレイヤーキャラは、
<この世界で最強クラス>
のステータスを与えられた存在であるため、逃げ切ることが可能だった。
そしてこれが<フラグ>なのである。
その<ハートマーク模様の牛>をスルーしてイベントを起こさずにゲームを始めても本編はクリアできるものの、いわゆる<隠し要素>の一つとして用意されたものだった。だからたとえこのイベントを起こしても例の<イベント>の方は始まらないように設定して運用しているということだ。
だが、その時、
「!?」
アリシアは何とも言えない感覚を味わった。
どう表現していいのか分からない、それでも無理に表現するなら、
『自分がズレた』
ような感覚。
体と自分の五感の位置がズレてしまったかのような。
その所為で足がもつれ、転倒してしまう。
本来なら有り得ないことだった。ここではそのようなことは起こらずに<始まりの村>へと逃げ込めるはずだったのだ。
そして一方、フルダイブ用ユニットが設置された部屋では、スタッフの女性が、
「デバイス側に不正アクセスを検知!!」
異常を告げる。
「!? 遮断しろ! 作業中止!!」
宿角が声を上げた。
それは、これまでになかった<現象>だった。データのやり取りが不安定になるという異常は確認されていたものの、<不正アクセス>などという事態は検出されなかったのである。
そして、問題があるとされる<イベント>はずっと先だった。だからまずはそこまで進まないと話にならない。
実際には開発者権限でそこまでスキップも可能なものの、念の為、他にも異状がないかをアリシアにも確認してもらうことも目的の一つであり、また、<伏線>として紐付されたデータ類にも影響が出ている可能性もあり、それもまたチェックする必要もあった。
すると、その<伏線>の一つである、<ハートマーク模様の牛>がアリシアの視界に捉えられる。
実はその牛に近付いてイベントを起こすことが、件のイベントを発生させる<フラグ>となっているのだ。
「では、アリシアくん頼むよ」
ボイスチャットで宿角から指示を受け、
「分かりました」
アリシアは応えつつ<ハートマーク模様の牛>へと近付き、背中近くにあるハートマーク模様にそっと触れた。
と、瞬間、
「ウモオオオ~ッッ!!」
それまでは大人しく草を食んでいた牛が突然興奮。明らかに攻撃的な気配を放ちながら彼女を睨み、
「ごめんなさぁ~い!!」
声を上げながら逃げる彼女を猛然と追いかけてきた。
普通なら人間の足ではおよそ本気で走る牛からは逃れられないものの、この<ORE-TUEEE!>内のプレイヤーキャラは、
<この世界で最強クラス>
のステータスを与えられた存在であるため、逃げ切ることが可能だった。
そしてこれが<フラグ>なのである。
その<ハートマーク模様の牛>をスルーしてイベントを起こさずにゲームを始めても本編はクリアできるものの、いわゆる<隠し要素>の一つとして用意されたものだった。だからたとえこのイベントを起こしても例の<イベント>の方は始まらないように設定して運用しているということだ。
だが、その時、
「!?」
アリシアは何とも言えない感覚を味わった。
どう表現していいのか分からない、それでも無理に表現するなら、
『自分がズレた』
ような感覚。
体と自分の五感の位置がズレてしまったかのような。
その所為で足がもつれ、転倒してしまう。
本来なら有り得ないことだった。ここではそのようなことは起こらずに<始まりの村>へと逃げ込めるはずだったのだ。
そして一方、フルダイブ用ユニットが設置された部屋では、スタッフの女性が、
「デバイス側に不正アクセスを検知!!」
異常を告げる。
「!? 遮断しろ! 作業中止!!」
宿角が声を上げた。
それは、これまでになかった<現象>だった。データのやり取りが不安定になるという異常は確認されていたものの、<不正アクセス>などという事態は検出されなかったのである。
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