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ロボット主任、アリシアの細腕奮戦記
存在を消された娘、マリーネ
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水中ダンスショー<ポセイドン>は、ギリシャ神話における海神ポセイドンにまつわるエピソードを基に構成されたエンターテイメントショーである。
実際の物語は、神話として伝えられている数々のエピソードを参考にしながらも、『語られなかった無数のエピソードのうちの一つ』という体で、登場する神々などは神話のそれを用いつつほぼ創作として作られたものだった。
基本的には、ポセイドンの血を引く人魚達と、それと敵対したり惹かれ合ったりする人間達の物語だ。
現在は、<人魚姫>に独自の解釈を加え、ポセイドンの血を引く人魚の少女と、<セイレーン>と呼ばれる、歌で人間を惑わし海の底に引きずり込む海の怪物としての人魚を退治するべく現れた人間の勇者の若者との悲恋、<アウレリアの章>が行われていた。
今回、メイトギア課が製造を依頼された<魔鱗2341-DSE>は、半年後に公演予定である次章<メデューサの娘の章>で描かれることになる、
『メデューサがペルセウスに退治され首が刎ねられた際に滴った血から生まれたとされるペガサスとクリュサオルという子以外にも、実は人知れず人魚の娘が生まれていたのだが、そのあまりに残虐かつ攻撃的で傲慢な気性と、自身の母メデューサがポセイドンの愛妾であることとも相まって、ポセイドンの妻であるアンフィトリテに呪いの言葉を投げかけたことで、その存在そのものを『存在したという事実も含めて』世界から抹消されたことにより神話にさえ残ることがなかった人魚の娘<マリーネ>が、神々への呪いと共に現世へと帰還、ポセイドンの庇護の下で暮らす人間達に災いをもたらす』
という物語の中で、ポセイドンの愛妾メデューサの<存在を消された娘、マリーネ>を演じることになる予定である。
マリーネは、途方もなく強い怨念から凄まじい魔の力を得ており、恐ろしい人魚の魔女として神々をもてこずらせる怪物だった。
それを演じる上で求められているのは、『完全に人間性を感じさせない冷酷そのものの恐ろしさ』であるため、長時間、水中で自在に戦うという演出とも併せて人間の演者では再現不能ということで、魔鱗2341-DSEが必要とされたわけである。
「千堂様! すごいです! 感動しました!! 人間はこれだけのことができるんですね!!」
ショーの後、アリシアは興奮のあまり幼い子供のようにはしゃいでいた。
確かに彼女の言う通り、本来なら水中では自由に動くこともままならないはずの人間が、そのために開発された専用のフィンなどの装備の力を借りてとは言え、まるで本当の人魚のように美しく自在に踊り、舞っていたのだった。
実際の物語は、神話として伝えられている数々のエピソードを参考にしながらも、『語られなかった無数のエピソードのうちの一つ』という体で、登場する神々などは神話のそれを用いつつほぼ創作として作られたものだった。
基本的には、ポセイドンの血を引く人魚達と、それと敵対したり惹かれ合ったりする人間達の物語だ。
現在は、<人魚姫>に独自の解釈を加え、ポセイドンの血を引く人魚の少女と、<セイレーン>と呼ばれる、歌で人間を惑わし海の底に引きずり込む海の怪物としての人魚を退治するべく現れた人間の勇者の若者との悲恋、<アウレリアの章>が行われていた。
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マリーネは、途方もなく強い怨念から凄まじい魔の力を得ており、恐ろしい人魚の魔女として神々をもてこずらせる怪物だった。
それを演じる上で求められているのは、『完全に人間性を感じさせない冷酷そのものの恐ろしさ』であるため、長時間、水中で自在に戦うという演出とも併せて人間の演者では再現不能ということで、魔鱗2341-DSEが必要とされたわけである。
「千堂様! すごいです! 感動しました!! 人間はこれだけのことができるんですね!!」
ショーの後、アリシアは興奮のあまり幼い子供のようにはしゃいでいた。
確かに彼女の言う通り、本来なら水中では自由に動くこともままならないはずの人間が、そのために開発された専用のフィンなどの装備の力を借りてとは言え、まるで本当の人魚のように美しく自在に踊り、舞っていたのだった。
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