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ロボット主任、アリシアの細腕奮戦記
千堂アリシア、暇を持て余す
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さて、こうして<開発部メイトギア課、特別開発チーム主任>として働き出したアリシアだったものの、具体的にその業務内容はというと、実はまだほとんど何も決まっていない状態だった。
彼女がこうして人間の社員と共に『社員として』働くということ自体が彼女の役目なので、<特別開発チーム>の主任ではあるものの、その部署にいるのはアリシアただ一人である。つまり、<一人部署>というやつだ。
人間でなら形だけの閑職ということになるかもしれないものの、彼女の場合はその存在自体に意味があるので、有名無実というわけでもない。
ただ……
「暇です……」
部署をあげての出迎えが終わり業務が始まると、彼女はオフィスの一角に設けられた、パーテーションで区切られただけの仮設の部屋で、ただ一人椅子に座って佇んでいただけだった。
それでも、具体的な仕事はないと言っても、一応、いくらかすることは決められている。
メイトギア課で開発されるメイトギアの中で、特殊な用途のために特殊な仕様を与えられた機体が設計されることがある。そういう機体をテストするのが彼女の仕事の一つだった。
しかしそれは、年に数回、あるかどうかというレベルの仕事であることも事実。実際、現時点ではそういう機体は開発されていなかった。
なお、<特殊な仕様>とは言うものの、それはあくまで限定的な状況下で使用されるという意味であって、決して『性的な』という意味ではないことは申し述べておく。
性的な用途に用いられるロボットは、<ラブドール>と呼ばれるものが他に存在していて、それらは基本的に中小零細の企業によって製造されていることが多く、JAPAN-2社のように大手の有名企業が手がけることはほとんどない。
その辺りはやはり、企業イメージ的な点でさすがにハードルが高いからだろう。むしろ中小零細の方がそういう部分ではフットワークが軽い。
と同時に、ラブドールは、<セックス依存症>や<小児性愛>、<加虐性愛>といった疾患の治療に用いられる<医療器具>という一面も併せ持っている。実際、それらの診断が下れば保険適応も受けられ、定価の三割で購入が可能である。
もっとも、その診断を受けるには何度も検査を受けないといけないので、詐病で保険適用を受けることは決して簡単ではない。
簡単ではないが、わざわざ病気を装ってラブドールを購入しようなどという発想が既に病的なので、それはそれで診断が下りる場合もあるが。
まあその辺りの余談はさておいて、とにかく今は、アリシアは暇を持て余していたのだった。
彼女がこうして人間の社員と共に『社員として』働くということ自体が彼女の役目なので、<特別開発チーム>の主任ではあるものの、その部署にいるのはアリシアただ一人である。つまり、<一人部署>というやつだ。
人間でなら形だけの閑職ということになるかもしれないものの、彼女の場合はその存在自体に意味があるので、有名無実というわけでもない。
ただ……
「暇です……」
部署をあげての出迎えが終わり業務が始まると、彼女はオフィスの一角に設けられた、パーテーションで区切られただけの仮設の部屋で、ただ一人椅子に座って佇んでいただけだった。
それでも、具体的な仕事はないと言っても、一応、いくらかすることは決められている。
メイトギア課で開発されるメイトギアの中で、特殊な用途のために特殊な仕様を与えられた機体が設計されることがある。そういう機体をテストするのが彼女の仕事の一つだった。
しかしそれは、年に数回、あるかどうかというレベルの仕事であることも事実。実際、現時点ではそういう機体は開発されていなかった。
なお、<特殊な仕様>とは言うものの、それはあくまで限定的な状況下で使用されるという意味であって、決して『性的な』という意味ではないことは申し述べておく。
性的な用途に用いられるロボットは、<ラブドール>と呼ばれるものが他に存在していて、それらは基本的に中小零細の企業によって製造されていることが多く、JAPAN-2社のように大手の有名企業が手がけることはほとんどない。
その辺りはやはり、企業イメージ的な点でさすがにハードルが高いからだろう。むしろ中小零細の方がそういう部分ではフットワークが軽い。
と同時に、ラブドールは、<セックス依存症>や<小児性愛>、<加虐性愛>といった疾患の治療に用いられる<医療器具>という一面も併せ持っている。実際、それらの診断が下れば保険適応も受けられ、定価の三割で購入が可能である。
もっとも、その診断を受けるには何度も検査を受けないといけないので、詐病で保険適用を受けることは決して簡単ではない。
簡単ではないが、わざわざ病気を装ってラブドールを購入しようなどという発想が既に病的なので、それはそれで診断が下りる場合もあるが。
まあその辺りの余談はさておいて、とにかく今は、アリシアは暇を持て余していたのだった。
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