9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
467 / 470
大希

涙を拭って

しおりを挟む
私は天を仰ぎ、そして大きく深呼吸をした後、涙を拭ってお義父さんを見詰めました。

するとお義父さんも、私を真っ直ぐに見詰め返してくださいます。私が出した答えを受け止める覚悟をなさった目で。

そんなお義父さんに、私は告げたのです。

「山仁さん……大変なことを打ち明けていただいて、ありがとうございます……

それを口にすることは、大変な勇気が要ったことと思います。何故なら、今まで積み重ねてきたものをすべて失うことにさえなるかもしれないことですから……

だけどそれは、私のために振り絞ってくださった勇気なのだと感じます。それを知るのが後になれば後になるほど、私は苦しむことになったでしょうから……

本当に、ありがとうございます……

山仁さん……もし、私が大希さんに認めてもらえれば、あなたが私の義理の父親になりますね。私は、あなたが私の父親になってくださるのなら、それはとても喜ばしいことだと思います。

今後とも、よろしくお願いいたします……」

私は、今の自分にできうる最も丁寧な対応で告げさせていただきました。

これから後も、きっと、重大な決断を何度も求められることがあるでしょう。私が目指す道を進むのであれば。それこそ命の選択をしなければいけないことさえあるかもしれません。

それに比べれば、すでに答えの決まっている今回のような件など、その場で決断できなくてはきっと話にならない。

でも、決断できるようになったのは、きっと、出逢いに恵まれたから。ここまでの数々の経験と、多くの実例に触れてきたことで私はこの決断ができる私になれたのです。

「こちらこそ、あの子のことをよろしくお願いいたします……」

畳に手を着き、深々と頭を下げるお義父さんに、私も慌てて畳に手を着き、頭を下げさせていただきました。

そんな私とお義父さんを、イチコ達があたたかい目で見守ってくれているのが分かります。

ああ……私は本当に幸せ者です……

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

処理中です...