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大希
皆で寛ぎに
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「明日土曜日はまた、例の旅館の予約が取れましたので、皆で寛ぎに行こうと思います」
会合が終わる直前、私は山下さんにそう告げました。特にフミにとっての気分転換になればと思うのです。
「いいですね。寛いできてください」
山下さんはそうおっしゃってくださいました。
翌日土曜日。昼前にヒロ坊くんの家に集合します。
「フミちゃん、大丈夫?」
家に訪れたフミの顔を見るなり、ヒロ坊くんが声を掛けます。
「ありがと、ヒロ坊。ヒロ坊がそんな風に言ってくれるから私も頑張れるよ」
フミにとって彼はもう、<もう一人の弟>でした。実の弟くんからはもらえない安らぎを与えてくれるのがヒロ坊くんです。
なのに、
「ヒロ坊、ピカの背中流してあげて」
旅館についてまずは昼食を済ませ、それからいつものように一緒にお風呂に入ると、フミが彼にそう言ったのです。
「え…?」
突然のことに呆気にとられてしまった私を、
「まあまあまあ」
「まあまあまあ」
と、フミとカナが体を掴んで洗い場に座らせます。
「え、え…あ、あの……!」
助けを求めようと視線を向けると千早は『やれやれ』と呆れたように肩を竦め、イチコはただ微笑みながら見守っているだけです。
「では、先生、よろしくお願いいたします」
などと、フミとカナが芝居じみた口ぶりと仕草で彼を招き、
「うむ、よかろう」
と彼もドラマの整体師やマッサージ師のようにやや胸を張りつつタオルを手に私に近付いてきました。
「あのあのあのあの……!」
私は顔も体もカーッと熱を帯びて心臓が五月蠅いくらいに激しく鼓動を刻み、思考力が失われて言葉になりません。
「よいよい、力を抜いて私に任せておきなさい」
彼はすっかり<役>になり切り、そんなことを言ってきます。
そしてタオルを掴んだ彼の手が私の背中に触れた瞬間、
「ひゃんっっ!!」
って、自分でも聞いたことのない声が出てしまったのでした。
「あ~、あの旅館ってやっぱりいいなあ~。ほんとほっこりするぅ~」
夕方、ヒロ坊くんの家に帰ってきて山下さんを迎えた時、フミがしみじみそう言いました。
ここしばらくの彼女のそれとは全く違う、とても柔らかく緩み切った感じの声でした。
ただ、私はそれどころではなかったのですが。
「今日はヒロ坊に背中を流してもらったんだよね~」
カナが玲那さんと絵里奈さんに説明するかのように言うと、私はまた、カーッと体が熱くなってきます。
「私のために予約取ってくれたんだろうけど、そうやってピカにとってもいい思い出になってくれたらいいよ」
フミがそう言ったのですが、私は何も言えませんでした。
会合が終わる直前、私は山下さんにそう告げました。特にフミにとっての気分転換になればと思うのです。
「いいですね。寛いできてください」
山下さんはそうおっしゃってくださいました。
翌日土曜日。昼前にヒロ坊くんの家に集合します。
「フミちゃん、大丈夫?」
家に訪れたフミの顔を見るなり、ヒロ坊くんが声を掛けます。
「ありがと、ヒロ坊。ヒロ坊がそんな風に言ってくれるから私も頑張れるよ」
フミにとって彼はもう、<もう一人の弟>でした。実の弟くんからはもらえない安らぎを与えてくれるのがヒロ坊くんです。
なのに、
「ヒロ坊、ピカの背中流してあげて」
旅館についてまずは昼食を済ませ、それからいつものように一緒にお風呂に入ると、フミが彼にそう言ったのです。
「え…?」
突然のことに呆気にとられてしまった私を、
「まあまあまあ」
「まあまあまあ」
と、フミとカナが体を掴んで洗い場に座らせます。
「え、え…あ、あの……!」
助けを求めようと視線を向けると千早は『やれやれ』と呆れたように肩を竦め、イチコはただ微笑みながら見守っているだけです。
「では、先生、よろしくお願いいたします」
などと、フミとカナが芝居じみた口ぶりと仕草で彼を招き、
「うむ、よかろう」
と彼もドラマの整体師やマッサージ師のようにやや胸を張りつつタオルを手に私に近付いてきました。
「あのあのあのあの……!」
私は顔も体もカーッと熱を帯びて心臓が五月蠅いくらいに激しく鼓動を刻み、思考力が失われて言葉になりません。
「よいよい、力を抜いて私に任せておきなさい」
彼はすっかり<役>になり切り、そんなことを言ってきます。
そしてタオルを掴んだ彼の手が私の背中に触れた瞬間、
「ひゃんっっ!!」
って、自分でも聞いたことのない声が出てしまったのでした。
「あ~、あの旅館ってやっぱりいいなあ~。ほんとほっこりするぅ~」
夕方、ヒロ坊くんの家に帰ってきて山下さんを迎えた時、フミがしみじみそう言いました。
ここしばらくの彼女のそれとは全く違う、とても柔らかく緩み切った感じの声でした。
ただ、私はそれどころではなかったのですが。
「今日はヒロ坊に背中を流してもらったんだよね~」
カナが玲那さんと絵里奈さんに説明するかのように言うと、私はまた、カーッと体が熱くなってきます。
「私のために予約取ってくれたんだろうけど、そうやってピカにとってもいい思い出になってくれたらいいよ」
フミがそう言ったのですが、私は何も言えませんでした。
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