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大希
自己判断で
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新たに報告のあった、フミの弟くんの振る舞いについて、私はきちんと山下さんと玲那さんにお伝えしなければいけないと思いました。
そしてそれは、フミ自身の決断でもありました。それを明かした上で……
なので私は続けます。
「具体的な内容についてはここではあえて触れませんが、玲那さんの事件について、彼の発言は、非常に一方的で近視眼的で狭隘で配慮に欠けるものであったと言わざるを得ません。しかもそれを本来のアカウントとは別の、他人のふりをしたアカウントで行っていたのです」
私がそこまで説明した時、
「ごめんなさい…!」
フミが頭を下げました。さらに続けて、
「あいつ、玲那さんのことを滅茶苦茶に言ってたんです。玲那さんがどれほど苦しんできたのか知りもしないクセに、正義ぶって好き勝手…!」
搾り出すようにそこまで言って、しかし言葉が詰まってしまったようです。
けれど、山下さんも玲那さんも、そして絵里奈さんも落ち着いていらっしゃいました。決してフミのことを責めたりしませんでした。
もちろん玲那さんに対して配慮に欠ける発言をしたのはフミの弟くんであってフミに責任があるようなことではありません。しかし世の中には、家族だというだけで一体と見做して攻撃的に罵る方もいらっしゃいます。
ですが、山下さんご家族はそうではありませんでした。
玲那さんが言います。
「フミ。ありがとう。そうやって私のことを想ってくれるだけでもう十分だよ。弟くんとフミは違う人間だからね。こういうこともあると思う。フミが自分を責める必要なんてない」
ああ…本当に素晴らしい方です。これほどの方が包丁で実の父親を刺さずにはいられなかったのですから、彼女が置かれていた境遇がどれほどの地獄だったのかということです。
これほどの方が、自己判断で自らの実の父親に対して死刑判決を下し、そして死刑を執行しようとしたのです。
恨みによる殺人、および殺人未遂は、つまるところそういうことなのでしょう。
いえ、直接の恨みでなくても、世の中や社会に対して自分勝手に判決を下し、刑を執行しようとするのがいわゆる<凶悪事件>と呼ばれるものだというのが、私の実感でした。
このままではいずれ、フミの弟くんがそれを実行してしまう危険性は決して否定はできないでしょう。
現時点ではそこまでではないと判断はできますが、将来にわたって変わらないという保証はありません。それが問題なのです。
フミは、うなだれながら玲那さんの言葉に何度も頷いていました。自身の弟が玲那さんを罵ったことを悔いて。
フミの弟くんは、自身がこれほどまでに実の姉を悲しませていることをどう感じるのでしょうか。
そしてそれは、フミ自身の決断でもありました。それを明かした上で……
なので私は続けます。
「具体的な内容についてはここではあえて触れませんが、玲那さんの事件について、彼の発言は、非常に一方的で近視眼的で狭隘で配慮に欠けるものであったと言わざるを得ません。しかもそれを本来のアカウントとは別の、他人のふりをしたアカウントで行っていたのです」
私がそこまで説明した時、
「ごめんなさい…!」
フミが頭を下げました。さらに続けて、
「あいつ、玲那さんのことを滅茶苦茶に言ってたんです。玲那さんがどれほど苦しんできたのか知りもしないクセに、正義ぶって好き勝手…!」
搾り出すようにそこまで言って、しかし言葉が詰まってしまったようです。
けれど、山下さんも玲那さんも、そして絵里奈さんも落ち着いていらっしゃいました。決してフミのことを責めたりしませんでした。
もちろん玲那さんに対して配慮に欠ける発言をしたのはフミの弟くんであってフミに責任があるようなことではありません。しかし世の中には、家族だというだけで一体と見做して攻撃的に罵る方もいらっしゃいます。
ですが、山下さんご家族はそうではありませんでした。
玲那さんが言います。
「フミ。ありがとう。そうやって私のことを想ってくれるだけでもう十分だよ。弟くんとフミは違う人間だからね。こういうこともあると思う。フミが自分を責める必要なんてない」
ああ…本当に素晴らしい方です。これほどの方が包丁で実の父親を刺さずにはいられなかったのですから、彼女が置かれていた境遇がどれほどの地獄だったのかということです。
これほどの方が、自己判断で自らの実の父親に対して死刑判決を下し、そして死刑を執行しようとしたのです。
恨みによる殺人、および殺人未遂は、つまるところそういうことなのでしょう。
いえ、直接の恨みでなくても、世の中や社会に対して自分勝手に判決を下し、刑を執行しようとするのがいわゆる<凶悪事件>と呼ばれるものだというのが、私の実感でした。
このままではいずれ、フミの弟くんがそれを実行してしまう危険性は決して否定はできないでしょう。
現時点ではそこまでではないと判断はできますが、将来にわたって変わらないという保証はありません。それが問題なのです。
フミは、うなだれながら玲那さんの言葉に何度も頷いていました。自身の弟が玲那さんを罵ったことを悔いて。
フミの弟くんは、自身がこれほどまでに実の姉を悲しませていることをどう感じるのでしょうか。
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