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外伝

恐怖のスターライトバレー その3

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『そんな盗聴したみたいのが証拠にならないことぐらい分かってんだよ!』

だが、そんな風に開き直る脅迫者に対しても、弁護士はあくまで冷静だった。

それどころか、彼らの素性や家族構成、勤め先とそこでの評価、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムまで特定し、さらには裏アカウントやサブアカウントさえも読み上げ、果ては過去の交際歴やその相手、裏アカウントから推測された性癖まで暴露してみせた。

それらは無論、探偵社が調べ上げた情報である。その探偵社は、俗に<特定厨>と呼ばれる、ネット上の情報を紐付けすることに異様な執念を見せる人間たちをスタッフに加え、かつ多くの特定厨と連携してネット上の情報を洗い出すということに長けていたのだ。そうやって得た情報を、今度は生身での調査を得意とするスタッフが裏付けをとることでより確実なものとするわけである。

自身についてのあらゆる情報が丸裸にされたことを知った脅迫者の内、従属的な立場だった二名はその時点ですっかり意気消沈してしまったが、主犯格の男だけは諦め悪く逆上し、

「っだ、ごるぁ、っざけんな!」

と弁護士すら恫喝し力尽くで黙らせようとするものの、そこに待機していた警備員が突入。男を取り押さえたのであった。

こうして、自分の力が一切敵わないのを徹底的に思い知らせるという形で脅迫者を沈黙させることに成功。今後一切、同様の行為を行わない、反社会的な行為を行わないという念書を書かせた上でその場で示談を成立させた。もしこれが破られた場合、全ての情報を明らかにした上で余罪について刑事告訴すると念を押してだが。



以上が、美嘉が解決に関わった事件の概要である。しかし、これについて、事件の発端となった女子生徒は美嘉に対してもちろん感謝もしていたのだが、それ以上に恐怖を感じたということであった。何しろ美嘉は、自らは一切、表に出ることなく、探偵社と弁護士と警備会社を思うままに操り、事件を闇から闇へと葬り去ってしまったのだから。

それだけではない。今回の件で掛かった費用については就職後に分割で返済すると書面で正式に契約を結ぶという抜かりのなさである。しかも、それが果たされなかった時には女子生徒の両親に今回の件を告げた上で新たな返済計画を両親も交えて立てるという条件付きで。

「これに懲りたら軽挙妄動は慎んでくださいね」

真正面から真っ直ぐに自分を見詰め静かに微笑みながらそう言った美嘉の姿を、女子生徒は次のように評したという。

「怖かった……彼女のことが怪物みたいに思えた……絶対に敵に回しちゃいけないヤツだよ、あれ……」

もっとも、それも無理からぬことかもしれない。何しろ星谷美嘉ひかりたにみかという少女は、必要とあらばいかなる手段を用いることも辞さない、毒を以て毒を制するということさえ躊躇なく行える胆力の持ち主だったのだから。

その後、<スターライトバレー>という単語が恐怖の代名詞として一部に出回ったという話もあるが、事実かどうかは確認が取れていない。

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