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大希

レンタル家族

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館雀かんざくさんの件をきっかけにして、フミが抱える問題が改めて浮き彫りになった形ですね。

その一方、カナは、

『もう、気にしても仕方ないかなって自分でも思うんだ。私の力じゃ家族を元に戻すことはできない。だったらそれをいつまでも悔やんでたって始まらないよ。私は私で幸せになる。家族には頼らない。家族には期待しない。だって、家族って言っても私とは別人なんだからさ』

と言って、自身の置かれている状況や実の家族についてある種の諦観を得ているようです。それはもはや達観と言ってもいいのかもしれません。

実際、波多野家が抱える問題は、高校生であるカナにはどうすることもできないものですし。そういう、自分の力ではどうすることもできないものに精神的に囚われ続けても解決しないというのも事実でしょうね。



翌日、フミはひどく疲れた顔をしていました。

「行ってた塾がね、私には全く合わなかったんだ。講師があれこれやいやい言ってくるばっかりで一ミリも頭に入ってこなかったんだよ。だから辞めたんだけど、それでお母さんに、『お金が無駄になった!』って延々イヤミ言われてさあ……」

実はフミは、来年の高校受験に向けて塾に通っていたのです。しかし私の目からもあまり効果が出ていないことは感じられていましたので、注視していたのです。

「もしよろしければ、私が家庭教師をしますよ」

とは申し上げていたのですが、お母さんの方が熱心に塾を勧めたようですね。ただそれも、<受験を控えた娘に対して気を遣っている母親>を演じるためのポーズでしかないと言います。

「はあ…家に帰るのが憂鬱……」

夕方、いつものようにヒロ坊くんの家に集まっていた時、フミが溜息と共に漏らしました。

そして、

「お金を無駄にするなとか言って、一番無駄遣いしてるの自分じゃん。見栄張って豪勢なランチしにいって服とかバッグとか買いまくって。ほとんど着てないし使ってないの私知ってるんだよ? 

エステとかも行ってるみたいだけど、いくらやっても結局はただのおばちゃんじゃん。それが無駄遣いじゃなかったら何だって言うのよ……!」

と、絞り出すように言いました。

そんなフミに、イチコが、

「どんまい、フミ。仕事は大変だと思うけど」

そう声を掛けます。

イチコが言った<仕事>というのは、フミは現在、自宅に帰ることを、

『レンタル家族としての仕事に行っているだけ』

と自身に言い聞かせているのです。イチコはそれに合わせて言ったのでした。それに対してフミも、

「うん、そうだね。仕事だから仕事だから。気にしない。あの人たちはただの職場の人たち。今から仕事に行くだけ。うん、ただの仕事」

と、自身に言い聞かせるように応えたのでした。

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