9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

京衛武百十

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大希

ラブレター事件 その11

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『目には目を、歯には歯を』という言葉の基となったとされる<ハムラビ法典>が運用されていた当時も、実際には様々な理由で加害者側の罪が免責されることはあったそうです。

しかも、身分が上の者が下の者を害した時には罪にならなかったことさえあったとのこと。

決して、『罪を犯したものには必ず厳しい罰を!』というわけではなかったということなのです。

ましてや館雀かんざくさんは、付きまといや罵倒といった迷惑行為は確かにしているものの、その<罰>として拉致監禁や暴行を行うというのは、完全に過剰ということになります。

そうすると今度は『加害者に甘い!』とおっしゃる方がいらっしゃるのですが、それを言う本人が、他人に対する誹謗中傷や名誉棄損、侮辱といった加害行為を見逃してもらっていたりするのではないですか? 加害者に厳しくあるべきとおっしゃるのであれば、ネット上で誹謗中傷や名誉棄損、侮辱といったことを行っている方々すべてが厳しく罰せられるべきだと思うのですが?

他人の加害行為に対しては厳しくしろと言いつつ、自身の加害行為については『これくらいはいいだろ!』と言って逃れようとするのですか?

実に手前勝手というものですね。

故に、私は、館雀さんに対しても何か実力行使に及ぶつもりはありません。あくまで付きまといや罵倒をやめていただきたいだけなのです。その為に必要な対処を、法に触れない範囲で取りたいと思うだけです。

なので、イチコ達が家に上がった後、私は一人外に残って、馴染みの探偵事務所に館雀さんについての身辺調査を依頼しました。加えて、いつも私の身辺警護を行ってくださっている警備会社にも、万が一の事態に備えてすぐに駆けつけられるようにお願いしました。するとすぐに、警備会社の自動車がイチコの家からも見える位置に現れました。

心強い限りです。警備会社にとっての警護対象はあくまで私ですが、私がその場に立ち会うことで、私を警護するという建前の下に、場合によっては館雀さんを制圧していただくことも想定します。

この間、一分強。それを済ませてから玄関をに入ると、ヒロ坊くんと千早と沙奈子さんが不穏な空気を察したのか、心配そうな様子で出迎えてくれました。

「なんか、あったの?」

千早が険しい表情で訊いてきます。それに対して私はあくまで穏やかな口調を心掛けつつ、

「大丈夫です。私に任せておいてください」

と応えさせていただきました。しかしそれがもう千早にとっては『ただ事じゃない』と悟る根拠になったようで、

「ヒロと沙奈は私が守るよ…!」

決意を込めた表情で返してきたのでした。

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