273 / 470
大希
ラブレター事件 その10
しおりを挟む
『お茶でもご馳走するから』
そう声を掛けたイチコに、館雀さんは、
「はっ! 誰があんたみたいな下流の負け犬のお茶とか飲むっていうのよ。負け犬根性が移りそうだから要らないわ! 私は謝罪を要求しに来ただけよ!」
と、嘲り笑うように吐き捨てます。
どこまでも人を見下さずにはいられない人なのですね。
ですがそれは、所詮、自信のなさの裏返しだというのが、私には分かってしまいました。かつての私も同じように他人を見下していましたが、それは結局、自分に自信がなかったからなのです。自負を持っていたつもりではありましたが、実際にはただの虚勢に過ぎなかったのです。
しかし、こういうタイプの人は感情を昂らせ過ぎると何をするか分からないという面も確かにあります。どのような伝手を辿ったのかは分かりませんがイチコの自宅まで突き止めたのですから。いえ、実際にはとりあえずだいたいの場所までしか分からず近所をしらみつぶしに当たっていたところに私達が出くわした形なのでしょうが、これは非常に憂慮すべき事態です。すぐさま探偵事務所に調査を依頼しなければなりません。そして実効性のある対処を行わなければ……!
『誰があんたみたいな下流の負け犬のお茶とか飲むっていうのよ』
とか言いながらも、館雀さんはイチコに続いて家に上がり込みました。その無神経さもそうですが、それ以上に、自身と対立状態にある相手の家に安易に上がり込むその不用心さに私は呆れてしまいました。
ここは完全に相手のテリトリーです。罠でもなんでも用意し放題です。屈強な男性が待ち構えているかもしれません。武器を携帯した何者かが潜んでいるかもしれません。その場合、どう対処するつもりなのでしょう?
小柄な高校一年生の女子など、一般的な成人男性でさえ容易く押さえ付けてしまえるでしょうに。
そういうことを想定していないとしか思えない行動。
狡猾なようでいて実に底が浅い。
このままでいれば彼女はいずれ、自身の行いにより手痛いしっぺ返しを食らうでしょうね。
それが彼女のしたことに対して相応の物であれば構わないのですが、人間というものはえてして過剰な罰を望んでしまいがちな生き物です。
『目には目を、歯には歯を』という言葉をよく用い『必ず報いを』と言うのですが、その<報い>が本人の行為をはるかに上回っている場合が少なくないのです。
『目には目を、歯には歯を』という言葉は、本来、
『目を潰されたら目を潰すまで、歯を折られたら歯を折るところまで』
という、<罰の上限>を表したものでしかありません。そう、<上限>です。
『罪を犯した者には必ず厳しい罰を!』
という趣旨ではないのです。にも拘らず、過剰な罰を与える言い訳として用いている方が多いというのが実情でした。
そう声を掛けたイチコに、館雀さんは、
「はっ! 誰があんたみたいな下流の負け犬のお茶とか飲むっていうのよ。負け犬根性が移りそうだから要らないわ! 私は謝罪を要求しに来ただけよ!」
と、嘲り笑うように吐き捨てます。
どこまでも人を見下さずにはいられない人なのですね。
ですがそれは、所詮、自信のなさの裏返しだというのが、私には分かってしまいました。かつての私も同じように他人を見下していましたが、それは結局、自分に自信がなかったからなのです。自負を持っていたつもりではありましたが、実際にはただの虚勢に過ぎなかったのです。
しかし、こういうタイプの人は感情を昂らせ過ぎると何をするか分からないという面も確かにあります。どのような伝手を辿ったのかは分かりませんがイチコの自宅まで突き止めたのですから。いえ、実際にはとりあえずだいたいの場所までしか分からず近所をしらみつぶしに当たっていたところに私達が出くわした形なのでしょうが、これは非常に憂慮すべき事態です。すぐさま探偵事務所に調査を依頼しなければなりません。そして実効性のある対処を行わなければ……!
『誰があんたみたいな下流の負け犬のお茶とか飲むっていうのよ』
とか言いながらも、館雀さんはイチコに続いて家に上がり込みました。その無神経さもそうですが、それ以上に、自身と対立状態にある相手の家に安易に上がり込むその不用心さに私は呆れてしまいました。
ここは完全に相手のテリトリーです。罠でもなんでも用意し放題です。屈強な男性が待ち構えているかもしれません。武器を携帯した何者かが潜んでいるかもしれません。その場合、どう対処するつもりなのでしょう?
小柄な高校一年生の女子など、一般的な成人男性でさえ容易く押さえ付けてしまえるでしょうに。
そういうことを想定していないとしか思えない行動。
狡猾なようでいて実に底が浅い。
このままでいれば彼女はいずれ、自身の行いにより手痛いしっぺ返しを食らうでしょうね。
それが彼女のしたことに対して相応の物であれば構わないのですが、人間というものはえてして過剰な罰を望んでしまいがちな生き物です。
『目には目を、歯には歯を』という言葉をよく用い『必ず報いを』と言うのですが、その<報い>が本人の行為をはるかに上回っている場合が少なくないのです。
『目には目を、歯には歯を』という言葉は、本来、
『目を潰されたら目を潰すまで、歯を折られたら歯を折るところまで』
という、<罰の上限>を表したものでしかありません。そう、<上限>です。
『罪を犯した者には必ず厳しい罰を!』
という趣旨ではないのです。にも拘らず、過剰な罰を与える言い訳として用いている方が多いというのが実情でした。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道
Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道
周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。
女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。
※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる