9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

京衛武百十

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大希

いつもと変わらずに

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翌日曜日。自宅に帰って一人になって頭が冷えると、昨日の、いえ、それ以前から私の思考がどれだけ支離滅裂になっていたのかを思い知らされ、いたたまれない気分にもなります。ここ一週間ほどの私は、本当にどうかしていました。

でも、ヒロ坊くんは、そんな私にも、いつもと変わらずに、

「おはよう、ピカちゃん♡」

と挨拶してくれたのです。あれほど恥ずかしい姿を晒していた私すら、当たり前のこととして。

『人間がなることのすべては、恥ずかしいことでもなんてもない』

お義父さんがおっしゃってることは、こういうことも含んでいるのだと分かります。

人間である以上、恥ずかしい失敗をすることもたくさんあるでしょう。だけどそういうすべてが<人>であるが故に自然なことなので、ことさらあげつらい笑いものにする必要はないとお義父さんはおっしゃってくださっているのです。

そしてヒロ坊くんは、そんなお義父さんの教えをしっかりと受け継いでいる。

他人が何か失敗をしても、それをあげつらって笑いものにしたりしない。それについて笑うのは、失敗した本人が笑える時だけ。

それが自然とできるのです。

世の中には、他人の失敗をあげつらい笑いものにすることで自分を慰めようとする方もたくさんいらっしゃるようです。

そしてそれは、かつての私自身にも当てはまること。

ここ一週間ほどの私の様子など、かつての私が見れば間違いなく嘲笑い、蔑んだことでしょう。

昨日の失敗など、それこそ親の仇のように攻撃したに違いありません。

だけど、もし、私が今でもそんな人だったら、彼はこの穏やかで屈託のない笑顔で迎え入れてくれたでしょうか?

その光景を私は思い浮かべることができません。

それどころか、ただただ悲しそうな目で私を見るのではないでしょうか?

おそらく、間違いないでしょうね。



今日も、ヒロ坊くんと千早は、山下さんの家に、昼食を作りに行きます。山下さんも、昨日、イチコから私の失敗について聞いていますが、それについてはあまり気になりません。山下さんとそのご家族の皆さんも、他人の失敗を嘲笑ったりするような方々でないことはよく分かるからです。

山下さんとそのご家族が、かような方々であったなら、玲那さんの事件についても、あれほどまでに真剣になれなかったでしょう。

他人を嘲笑う方は、自身が困っている時にこそ、周囲からの救いの手が差し伸べられないと考えた方がいいでしょうね。

御自身の普段の行いが、そういう時に返ってくるのです。

<因果応報>とは、まさにそういうことを言うのだと、今は思います。

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