9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

京衛武百十

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大希

性に対する意識

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こうしてヒロ坊くんも一緒にあの旅館に行くことになったのですが、私自身はと言うと、そのことで舞い上がってしまい、どうにも地に足がついていない感じだったのは事実です。

授業中にもぼうっとしてしまい、先生に、

星谷ひかりたに、話を聞いてるか?」

と注意される始末です。

かつての私ならば教師にそう注意されることさえ屈辱と感じ、どうにかその教師に思い知らせてやろう的なことを考えてしまったでしょうが、もちろん、今はそんなことはしません。

「しっかし、ピカも分かりやすいよな」

休憩時間、いつものように四人で課題を進めていると、カナが呆れたようにそう言いました。

「お…大きなお世話です……!」

私はつい言い返してしまいましたが、自分でもいつもと違うことは分かっていたのです。

ヒロ坊くんと一緒にお風呂に入ることを想像すると、自分が自分でなくなるような錯覚にさえ囚われます。

するともう、冷静ではいられないのです。

そんな私のことさえ、イチコ達はあたたかく見守ってくださいました。

一方、ヒロ坊くんの方は、旅館のお風呂で、自分以外は全員女の子という状況でお風呂に入ることは分かっているはずなのに、まるで平然としていました。

彼にはまだ、異性に対する感覚が芽生えていないのでしょうか?

いえ、イチコによれば実はそうでもないそうなのです。深夜に放送しているアニメなども録画して見ているそうなのですが、そこでややセクシャルな表現が出たりすると眉を顰めたりもするとのこと。

まったく意識していないのならばそういうこともピンとこないのでしょうが、『性をコメディのように扱う』ことに対して嫌悪感と言うか苦手意識があるというのは、それなりに性に対する意識が芽生えていればこそなのでしょう。

しかし同時に、イチコやカナが下着姿で寛いでいても、それに対してはまったく平然としているそうです。

つまりこれは、『性をことさらコメディのようにデフォルメして扱う』ことが彼にとっては不快なのであって、人間が元々持っている<性>というもの自体に何か嫌悪感を抱いているというのとは違うのかもしれません。

そう、彼は既に生身の人間が持つ性というものに対しては達観しているのです。思春期を迎える前にすでに。

これも、

『生身の人間がなるもの、持っているものについては何一つ恥じることでも厭うことでもない』

というお義父さんの考え方がしっかりと根付いているということなのでしょうね。

だから私のことも変に意識しないのだと思われます。

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