9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

大希

過去の遺物

結局、＜ゲーム大会＞は、三時間ほど続きました。

するとさすがに見ているだけでも疲れたのか、沙奈子さんがうとうとしはじめたのです。

「あ、沙奈、眠い？」

それに気付いた千早が訊きます。

千早は、沙奈子さんのこともとても大切に想っていて、彼女の様子はいつも気にしているようでした。

かつてはイジメ同然にきつく当たったりもしていたにも拘らずです。それが今では彼女を守る側になったのですから。

「私、もう終わる。沙奈が眠そうだし」

そう言ってコントローラーを置きました。それを受けて、カナも、

「じゃあ、ここらでお開きにしよっか」

と、あれほど盛り上がっていたとは思えないほどにあっさりと終了したのでした。

ですが私もそろそろと思っていたところでしたので、何も言いません。

なお、アンナには先に休んでいてもらいました。でなければ、勤務時間を大幅に超過することになってしまいますので。

彼女の給与は、月額二十八万の固定給だと聞いています。それには時間外手当もあらかじめ含まれているのだそうです。お客様がいらっしゃらない時には実働八時間を切る程度ですが、お客様がいらっしゃる時には十数時間拘束されますので、過重労働を強いることになるのは私も望みません。

『社会は厳しいものだ』

とおっしゃって、月何十時間も残業し、自身がどれほどの過重労働をしているかを自慢げに語る方もいらっしゃるそうですが、私に言わせればそのようなものはマネジメント能力の不足を証明するだけのものでしかありません。

本当に優秀な方は、無駄な長時間労働はしませんし、優れた企業は過重労働を強いたりはしません。父が重役を務める家電メーカーもそうです。残業を発生させないことこそが評価されるのですから。

省力化とそれを実現する為の効率化が今は求められているのです。＜二十四時間戦う企業戦士＞など、過去の遺物です。そのようなものにいつまでもしがみついていらっしゃる方々は、今後、社会についていけなくなるでしょう。

時代は常に変化しています。それを忘れてはいけませんね。

私もいずれ起業し、人を使うようになるでしょう。ですが、一方的に搾取するような醜悪な業態にはいたしません。それを実現できないような経営者は、今後百年の間に淘汰されていくだろうと私は睨んでいます。

高齢化についてはある時期を過ぎれば急速に収まっていくでしょうが、少子化については今後もこの流れは変わらないと推測されます。労働力は確実に減るのですから、それをいかに効率的に活用するかがこれからは望まれているのです。