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大希
おい、あいつ
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最初の電車は、急ぐ必要もないので途中まで各駅停車の準急に乗り、ゆっくりと席に着きます。みな楽しそうにワイワイとしていますが、羽目を外しすぎないようにしているのは分かります。
乗り換えた次の電車ではさすがに座れませんでしたが、誰も文句は言いません。あくまで同じ条件で乗っているのですから、特別扱いは求めていないからです。
ヒロ坊くんも、
「大丈夫?」
とイチコに訊かれて、
「大丈夫」
と応えていました。
私も千早に同じように訊きましたが、
「大丈夫だよ」
って応えてくれました。
千早も今は大切にされ、自身の存在を周囲に認めてもらえているので、無闇に自身を特別扱いしてもらおうとする必要がないのでしょう。
そう、とにかく自分を特別扱いしてもらいたがる方は、自身の存在を認めてもらえている実感が薄いために、特別扱いしてもらうことで承認欲求を満たしたいということなのかもしれないと今は思っています。
なにしろ、千早もヒロ坊くんも沙奈子さんも、自身を優先してもらったり、他人から特別扱いしてもらおうとしないのです。他人に順番を譲ることにも躊躇いがありません。多少後回しにされたとしてもいずれ自分の番が来ることも分かっているからなのでしょうね。
ヒロ坊くんやイチコの鷹揚さもそこから来ているのだと感じます。
そのようなことを改めて感じつつ、神戸三宮で今度はJRに乗り換える為にJR三ノ宮駅へと移動します。
「きちんと整列してくださいね」
私がそう声を掛けるまでもなく、自然と皆、整列して歩いてくれました。そうすることが当たり前なのでしょう。
なのに、移動中、信号待ちで立ち止まったその時、
「おい、あいつ、ネットに載ってたレイプ犯の妹じゃね?」
…え……!?
私の耳に届いてきたその言葉に視線を送ると、そこには、いかにも軽薄そうな大学生くらいの男性が二人、こちらを見てニヤニヤと笑っていたのです。
『バレた……!?』
私の体に緊張感が走ります。いくらネットにカナの写真まで晒されていたとはいえ、まさかここで……?
カナの様子を窺うと、彼女はポロポロと涙をこぼしていたのでした。
彼らを睨み付けるでもなく、抗議するでもなく、ただ涙を……
「ちょっと、止めなよ。女の子泣かせて。みっともない…!」
男性の連れらしい、やはり大学生くらいの女性二人が彼らの服の裾を引っ張りながらたしなめてくれたことで、男性もバツが悪そうに視線を逸らし、青信号になって私達が歩き出してもその場に立ち止まっていました。
この時はそれ以上騒ぎになることもありませんでしたが、玲那さんが一緒に来なかったのは、これを心配してのことなのだと、改めて思い知らされたのでした。
乗り換えた次の電車ではさすがに座れませんでしたが、誰も文句は言いません。あくまで同じ条件で乗っているのですから、特別扱いは求めていないからです。
ヒロ坊くんも、
「大丈夫?」
とイチコに訊かれて、
「大丈夫」
と応えていました。
私も千早に同じように訊きましたが、
「大丈夫だよ」
って応えてくれました。
千早も今は大切にされ、自身の存在を周囲に認めてもらえているので、無闇に自身を特別扱いしてもらおうとする必要がないのでしょう。
そう、とにかく自分を特別扱いしてもらいたがる方は、自身の存在を認めてもらえている実感が薄いために、特別扱いしてもらうことで承認欲求を満たしたいということなのかもしれないと今は思っています。
なにしろ、千早もヒロ坊くんも沙奈子さんも、自身を優先してもらったり、他人から特別扱いしてもらおうとしないのです。他人に順番を譲ることにも躊躇いがありません。多少後回しにされたとしてもいずれ自分の番が来ることも分かっているからなのでしょうね。
ヒロ坊くんやイチコの鷹揚さもそこから来ているのだと感じます。
そのようなことを改めて感じつつ、神戸三宮で今度はJRに乗り換える為にJR三ノ宮駅へと移動します。
「きちんと整列してくださいね」
私がそう声を掛けるまでもなく、自然と皆、整列して歩いてくれました。そうすることが当たり前なのでしょう。
なのに、移動中、信号待ちで立ち止まったその時、
「おい、あいつ、ネットに載ってたレイプ犯の妹じゃね?」
…え……!?
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『バレた……!?』
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彼らを睨み付けるでもなく、抗議するでもなく、ただ涙を……
「ちょっと、止めなよ。女の子泣かせて。みっともない…!」
男性の連れらしい、やはり大学生くらいの女性二人が彼らの服の裾を引っ張りながらたしなめてくれたことで、男性もバツが悪そうに視線を逸らし、青信号になって私達が歩き出してもその場に立ち止まっていました。
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