9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
88 / 470
外伝

外伝3 その2 「クラスにバカがいるとみんなが迷惑する」

しおりを挟む
「おはよ~」

「おはよ~、ち~」

「おはよ~、千歳」

朝、教室に入って麗美阿れみあ美登菜みとなにあいさつした。二人は私の親友だ。麗美阿は私のことを『ち~』って呼ぶ。美登菜はそのまま『千歳』って呼ぶけど。私は『レミ』と『ミト』って呼んでる。

私はこのクラスは割と気に入ってる。みんな仲いいし。でも、一人だけウザいのがいる市川美織いちかわみおりだ。こいつは勉強もダメ運動もダメ空気も読めないのトリプルバカで、しかもすぐ泣く。泣いて先生に告げ口する。だからみんなこいつのことが嫌いだ。すぐに泣きついてくるから先生も迷惑してる。『美しい』なんて字はこいつにはもったいない。だから『ぶおり』って呼んでる。

「ぶおり、あんた今日、日直でしょ。ちゃんと黒板きれいにしなさいよ」

朝一で黒板をきれいにするのは日直の仕事だ。なのにこいつはちゃんと仕事をしようとしなかった。だから私は言ってやったんだ。こうやってちゃんと言ってやるんだから私は優しいだろ。

こうやって私が言ってやってんのに、ぶおりは返事もしないでノロノロしてた。こいつホントにグズ!

「早くしなさいよ! 先生来ちゃうでしょ!」

私がそう言うと、レミとミトも一緒に言ってくれた。

「そうよ! 日直がちゃんとしないとみんなが迷惑するでしょ!」

「あんたいっつも迷惑かけてんだからね! 分かってんの!?」

そうだ。私たちでこいつをちゃんとした奴に躾けてやるんだ。でないとみんなが迷惑する。ノロノロしてるぶおりの背中を押して急がせてやった。そしたらやっと黒板をきれいにし始めた。さっさとやればこんなこと言われないのにさ。私だって好きで言ってるんじゃないんだよ。あんたのせいで迷惑する人がいるから言ってるんだよ。あんたがちゃんとやってれば私だってこんなこと言わないよ。

でも、私がこんだけ言ってやってんのに、ぶおりはそれでもノロノロしてて、黒板がきれいになる前に先生が来ちゃった。

「何だ、まだきれいにしてなかったのか。しっかりしなさい」

先生もぶおりに注意した。だから言ってやったのにさ。私の言う通りにしないから先生にも怒られるんだよ。

授業が始まっても、ぶおりはみんなに迷惑をかけてた。グループに分かれて発表する時に、ぶおりは何もしない。しゃべらないし意見ださないし。だから私たちがまとめたことを言えばいいだけにしてやったんだ。それなのに、ぶおりの奴、すっげー小さな声でしゃべってやがった。

「声が小さくて聞こえませーん。もっとはっきり言ってくださーい!」

端の方にいた男子がそう言った。またお前のせいで迷惑してる。

「ちょっと! もっと大きな声出しなさいよ!」

私が小声でそう言ってやったのに、ぶおりは無視して小さな声でしゃべってた。こいつ、ふざけすぎだろ! 私はさすがにムカついて、ぶおりの足を思いっ切りつねってやった。そしたら、

「痛あっ!」

って大きな声が出た。ほらやっぱりわざと小さい声で言ってやがったんだ。先生も、

「そんな大きな声が出せるんなら、ちゃんと声を出しなさい」

って言ってた。そしたらちょっとだけ声が大きくなった。でもぶおりがそんなだったから結局、発表は散々だった。何でこんな奴が一緒のクラスなんだよって思った。だけど私はあきらめないよ。私がこいつをまともな人間に躾けてやる。お母さんのやり方だったらきっとこいつだってまともになる。レミとミトも協力してくれるし。

それから私は、ぶおりを徹底的に躾けてやった。私がお母さんにされたのと同じようにしてやった。レミもミトも、クラスのみんなも、私の味方してくれた。

なのにぶおりの奴は、全然変わらなかった。いつまで経ってもバカでトロくて、みんなに迷惑をかけてた。先生も呆れてた。みんながこんなに頑張ってるのにダメとか、こいつマジもんのバカだったんだな。何でこんな奴が生きてんだよって思った。こんな奴、生きてるだけでみんなの迷惑だろ。

その日も、ぶおりは朝からみんなに迷惑をかけてた。運動会の練習するってのに体操服忘れてくるとか、マジありえない。六年全員で応援合戦やるんだよ?。お前のせいでちゃんとした練習できないじゃん。

「ぶおり! あんたがいたらみんなが迷惑するんだよ! お前もう学校くんなよ!」

私ははっきりとそう言ってやった。みんなも先生もそう思ってる。だから私が代表して言ってやるんだ。レミとミトも、

「そうよ! あんたがみんなの足引っ張ってるんだからね!」

「そうそう! あんたがみんなのためにできることは学校来ないことくらいだよ!」

って言ってくれた。そしたらぶおりの奴、また泣き出すんだろうなって思った。でも、この時のぶおりは何か違ってた。いつもなら泣いてこそこそするはずだったのが、私たちのこと睨んでた。何だよその態度。何か文句あんのかよ。悪いのはお前だろ。逆切れすんのか!?

「何か、文句あんの!?」

って私が怒ろうとしたら、ぶおりが急に飛び掛かってきた。

何だこいつ! ふざけんな!! 

私がパッと避けたら、後ろにいたレミにぶつかって、レミが叫んだ。

「痛っ!!」

その声が何か変だったから見たら、レミのほっぺたに赤い線がついてた。ううん、線だと思ったけど線じゃなかった。その線から、赤いのがバーッと流れ出たから。って、それ、血…!?

「きゃあーっっ!!」

って、女子の誰かが悲鳴を上げてた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

番(つがい)はいりません

にいるず
恋愛
 私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。 本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。  

処理中です...