77 / 470
大希
盲目的な正義
しおりを挟む
表から見える印象だけで断罪してしまっては、玲那さんのような、本来は被害者であった方まで容赦なく処断してしまうことになるでしょう。
『被害者の気持ちを考えろ!』
とおっしゃるのでしたら、苛烈な虐待の被害者であった玲那さんの気持ちも考えなければいけません。
そうすると、事件の全容を詳細に明らかにしてからでないと、最終的な判断はできないのです。そしてそれは、被疑者ないし被告人の表面的な印象だけで決めてしまってはいけないのです。
カナのお兄さんの件についても慎重に対応するのは、玲那さんのような方を守る為に必要なことなのです。
事件の全容を明らかにし、それでもなお厳しく断罪されるべきと判断された時、ようやく判決が下されるべきであると、今の私は思います。
かような事件が立て続けに起こったことで、私としてもヒロ坊くんにただメロメロになっている訳にはいかない状況が続きましたが、玲那さんの判決が確定し、釈放されたことで、ほんの少しだけ、皆さんの気持ちにも余裕が出てきたと思います。
ただ、それでもなお『良かった良かった』とはなりません。
と言うのも、玲那さんは今、絵里奈さんと一緒に、沙奈子さんとは別々に暮らしてらっしゃるからです。何故そのようになったかと申し上げるなら、
『盲目的な正義を声高に叫ぶ者達から沙奈子さんを守る為』
ということになるでしょうか。
山下さんと絵里奈さんが入籍し、玲那さんが山下さんと養子縁組をし、四人で一緒に暮らす為の物件を探しているまさにその時に事件が起こってしまい、それに伴って玲那さんがその時点で住んでらっしゃった部屋の住所がネット上に晒され、嫌がらせが殺到したのです。
それに加えて、メディアスクラムによる<報道の自由><知る権利>という名の暴力が横行。それらが沙奈子さんを傷付けないようにと、敢えて<別居>という形を取ることになったのでした。
正直申し上げて、私としては納得のいかない判断でした。沙奈子さんを守る為とはいえ、せっかく出来上がった家族が別々に暮らさなければいけないというのは好ましくないと思ったのです。
正義を盾に嫌がらせを行うような輩や、知る権利を盾に報道に見せかけた暴力を振るうマスコミについては、それに応じた対処をすればいいと私は考えました。
しかし、そんな私にカナは言ったのです。
「嫌がらせやマスコミの取材を完璧に抑え込むなんて、たぶん無理だよ……」
と……
それは、お兄さんの事件をきっかけに始まった、<顔を隠した正義の使徒>やマスコミらによる蹂躙を実際に受けたカナの実感なのでした。
『被害者の気持ちを考えろ!』
とおっしゃるのでしたら、苛烈な虐待の被害者であった玲那さんの気持ちも考えなければいけません。
そうすると、事件の全容を詳細に明らかにしてからでないと、最終的な判断はできないのです。そしてそれは、被疑者ないし被告人の表面的な印象だけで決めてしまってはいけないのです。
カナのお兄さんの件についても慎重に対応するのは、玲那さんのような方を守る為に必要なことなのです。
事件の全容を明らかにし、それでもなお厳しく断罪されるべきと判断された時、ようやく判決が下されるべきであると、今の私は思います。
かような事件が立て続けに起こったことで、私としてもヒロ坊くんにただメロメロになっている訳にはいかない状況が続きましたが、玲那さんの判決が確定し、釈放されたことで、ほんの少しだけ、皆さんの気持ちにも余裕が出てきたと思います。
ただ、それでもなお『良かった良かった』とはなりません。
と言うのも、玲那さんは今、絵里奈さんと一緒に、沙奈子さんとは別々に暮らしてらっしゃるからです。何故そのようになったかと申し上げるなら、
『盲目的な正義を声高に叫ぶ者達から沙奈子さんを守る為』
ということになるでしょうか。
山下さんと絵里奈さんが入籍し、玲那さんが山下さんと養子縁組をし、四人で一緒に暮らす為の物件を探しているまさにその時に事件が起こってしまい、それに伴って玲那さんがその時点で住んでらっしゃった部屋の住所がネット上に晒され、嫌がらせが殺到したのです。
それに加えて、メディアスクラムによる<報道の自由><知る権利>という名の暴力が横行。それらが沙奈子さんを傷付けないようにと、敢えて<別居>という形を取ることになったのでした。
正直申し上げて、私としては納得のいかない判断でした。沙奈子さんを守る為とはいえ、せっかく出来上がった家族が別々に暮らさなければいけないというのは好ましくないと思ったのです。
正義を盾に嫌がらせを行うような輩や、知る権利を盾に報道に見せかけた暴力を振るうマスコミについては、それに応じた対処をすればいいと私は考えました。
しかし、そんな私にカナは言ったのです。
「嫌がらせやマスコミの取材を完璧に抑え込むなんて、たぶん無理だよ……」
と……
それは、お兄さんの事件をきっかけに始まった、<顔を隠した正義の使徒>やマスコミらによる蹂躙を実際に受けたカナの実感なのでした。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
人生負け組のスローライフ
雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした!
俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!!
ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。
じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。
ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。
――――――――――――――――――――――
第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました!
皆様の応援ありがとうございます!
――――――――――――――――――――――
勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた
秋月静流
ファンタジー
勇者パーティを追放されたおっさん冒険者ガリウス・ノーザン37歳。
しかし彼を追放した筈のメンバーは実はヤバいほど彼を慕っていて……
テンプレ的な展開を逆手に取ったコメディーファンタジーの連載版です。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる