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ブルーウェンズデイ その2

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自分の部屋に戻り、鏡の前に立って、父に言われたことを思い返してみます。

『大人びてきた……?』

が、やはり分かりませんでした。それどころか、以前の私がどのような表情をしていたのかも思い出せません。そこにいたのは、何かを思い悩んでいるかのような情けない顔をした子供の姿が映っているだけだったのです。

『情けない顔……』

自分でもそう思います。でも……

『でも、そうです。悩んでるだけでは何も解決はしません。失敗は経験として活かせばいいんです。イチコもそう言ってくれてました。感情に身を任せて行動すると足をすくわれると学んだじゃないですか。だったら感情に囚われないことを心掛ければいいはずです……!』

などと自分に言い聞かせるものの、私は最近、何度同じことを言ってるのでしょう?

失敗してもそれを活かせばいいと言いながら、彼のことになると感情が抑えきれないんです。

それじゃダメなのは不審者に間違われたあの時点で分かったはずなのに、また同じ失敗をしてしまいました。こんなの私らしくありません。

けれど同時に思うんです。<私らしさ>って何だろうって。

かつて私は、優秀な人がそうじゃない人を強いリーダーシップで導いていくことで社会は良くなっていくと思っていました。いえ、今でも基本的にその考え方は変わっていません。ただ、優秀な人とそうでない人という区別が分からなくなってきたと言った方がいいのでしょうか? 何をもって優秀と言えばいいのか、何をもって優秀でないと言えるのか。

イチコや、イチコのお父さんは、住んでいる家の様子を見るだけでも分かる通り下流の人達です。なのに、その考え方や価値観や理念自体は決して私の両親にも劣っているとは思いません。単に、私の両親とは違って、企業の運営や経営に必要とされる部分において適性が低いというだけなのだと、これまで見てきて感じました。

以前の私ならそこだけを見て、『優秀じゃない』、『能力が低い』と切り捨てていたでしょう。

それなのに今では…フミやカナがそれぞれの家庭の問題をイチコに癒してもらうことで苦しさや辛さを乗り切っている事実を知ってしまった今では、従来の私の価値観に照らし合わせれば優秀なはずの父や母に育てられた私に、イチコと同じことができるかと言われれば到底できるとは思えないということも自覚しました。

とは言え、そんなものは下流の人達同士で傷を舐め合っているだけだと思う人もいるでしょう。実際に、イチコ達と友達になる前の私ならそう思ってしまっていたでしょう。だけど違うんです。それは確かに必要なことなんです。

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