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セレブガール・ミーツ・ボーイ その6
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『よろしくね、ヒロ坊くん』
そう挨拶させていただくと、ヒロ坊くんも、「よろしくお願いします」って元気に頭を下げてくれました。ああ、なんて良い子なのでしょう。
「ねえねえ、だいふく食べていい?」
と彼に言われて、「どうぞ、皆さんで召し上がってください」と私が応えた瞬間、彼は紙包みを乱暴にバリバリと破り始めました。決して行儀が良いとは言えないやり方でしたが、それさえ子供らしくて可愛いと思えました。
破った紙包みをゴミ箱に捨てて、現れた箱を彼が開けると、そこには整然と並べられた上品な塩大福が並んでいました。
「いただきま~す」
そう言ってヒロ坊くんが真っ先にそれを口に運び、続いて「いただきます」とイチコ達が手に取りました。
「うん、おいしい~」
ヒロ坊くんは、塩大福を頬張ったまま、小さく踊るように体を揺らします。その様子がまたまたまた可愛くて可愛くて。
「やっぱりおいしいね」
「抹茶が欲しくなるね」
「あたしはこれだけでも満足だ~」
と、フミ、イチコ、カナも声を上げました。カナは甘いものは基本的に苦手ですが、甘いだけじゃないお菓子ならいけるそうです。
不思議なもので、その一連のやり取りを経た私は、この部屋に入った時の居心地の悪さをほとんど忘れていたのでした。
それどころか、以前から何度も通っていたかのような気安さを感じてしまっていたのです。何でしょう? この感じ。それは確かに、イチコから感じる空気感に通じるもののように感じました。
ですが、ヒロ坊くんもイチコ達も、当たり前のように二個目を手に取ったことで、私は少し焦ってしまいました。イチコのご家族の分も合わせて八個入りを買ってきたのに、これでは無くなってしまいます。ヒロ坊くんはいいんですが、イチコのお父さんの分が。
「お父さんの分は残さなくていいんですか?」
思わず訊いてしまった私に、イチコは平然と、
「お父さんなら、どうせ私達で食べなさいって言うから大丈夫だよ」
って。私がそんなことでいいのですかと戸惑っていると、
「だよね、お父さん」
と、イチコが部屋に掛けられたカーテンに向かって声を掛けたのでした。すると、そのカーテンの向こうから、
「ん~? ああ…お父さんはいいから皆でいただきなさい…」
という、まるで寝言のようなぼんやりとした口調で返事が返ってきたのです。まさか? そう思って私がカーテンの方を見ているとまたイチコが、
「お父さん、そっちの部屋で寝てるんだよ」
なんて、信じられないことを言いました。そんな、家の人が寝ているすぐ隣の部屋でこんなことをしていていいのですか?
あまりのことに茫然とする私に、
「ま、いまさらだよな」
「私達も最初は驚いたけど、それがイチコんちの日常だから」
私の理解を大きく超えるその言葉に、私はますます混乱していたのでした。
そう挨拶させていただくと、ヒロ坊くんも、「よろしくお願いします」って元気に頭を下げてくれました。ああ、なんて良い子なのでしょう。
「ねえねえ、だいふく食べていい?」
と彼に言われて、「どうぞ、皆さんで召し上がってください」と私が応えた瞬間、彼は紙包みを乱暴にバリバリと破り始めました。決して行儀が良いとは言えないやり方でしたが、それさえ子供らしくて可愛いと思えました。
破った紙包みをゴミ箱に捨てて、現れた箱を彼が開けると、そこには整然と並べられた上品な塩大福が並んでいました。
「いただきま~す」
そう言ってヒロ坊くんが真っ先にそれを口に運び、続いて「いただきます」とイチコ達が手に取りました。
「うん、おいしい~」
ヒロ坊くんは、塩大福を頬張ったまま、小さく踊るように体を揺らします。その様子がまたまたまた可愛くて可愛くて。
「やっぱりおいしいね」
「抹茶が欲しくなるね」
「あたしはこれだけでも満足だ~」
と、フミ、イチコ、カナも声を上げました。カナは甘いものは基本的に苦手ですが、甘いだけじゃないお菓子ならいけるそうです。
不思議なもので、その一連のやり取りを経た私は、この部屋に入った時の居心地の悪さをほとんど忘れていたのでした。
それどころか、以前から何度も通っていたかのような気安さを感じてしまっていたのです。何でしょう? この感じ。それは確かに、イチコから感じる空気感に通じるもののように感じました。
ですが、ヒロ坊くんもイチコ達も、当たり前のように二個目を手に取ったことで、私は少し焦ってしまいました。イチコのご家族の分も合わせて八個入りを買ってきたのに、これでは無くなってしまいます。ヒロ坊くんはいいんですが、イチコのお父さんの分が。
「お父さんの分は残さなくていいんですか?」
思わず訊いてしまった私に、イチコは平然と、
「お父さんなら、どうせ私達で食べなさいって言うから大丈夫だよ」
って。私がそんなことでいいのですかと戸惑っていると、
「だよね、お父さん」
と、イチコが部屋に掛けられたカーテンに向かって声を掛けたのでした。すると、そのカーテンの向こうから、
「ん~? ああ…お父さんはいいから皆でいただきなさい…」
という、まるで寝言のようなぼんやりとした口調で返事が返ってきたのです。まさか? そう思って私がカーテンの方を見ているとまたイチコが、
「お父さん、そっちの部屋で寝てるんだよ」
なんて、信じられないことを言いました。そんな、家の人が寝ているすぐ隣の部屋でこんなことをしていていいのですか?
あまりのことに茫然とする私に、
「ま、いまさらだよな」
「私達も最初は驚いたけど、それがイチコんちの日常だから」
私の理解を大きく超えるその言葉に、私はますます混乱していたのでした。
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