687 / 697
第六幕
<徳>は世代を超えて受け継がれることは少ないが
しおりを挟む
『自分だけが救われればいい。自分だけが報われればいい。目先の面倒だけなんとかなればいい』
人間というのはとにかくそれで済まそうとする傾向がある。嘘でその場を取り繕うとするのも、暴力で手っ取り早く問題を処理しようとするのも結局はそれであろう。その先で何が起ころうと自分には関係ないと思っているのだ。
だから問題が根本的に解決されなかったり余計に拗れたりする。その場でムカついたからといって煽り運転などをして事故に至ったりするような事例など、その典型ではないだろうか。
『目先の感情を優先したことでその後さらに厄介なことになる』
という形で。
『他者を暴力で支配しようとする』などというのも、それが何を招くのかということについて考えていないからこそできることであろう。
独裁者などの場合はそれこそ、自身がその立場にいる間だけ上手くできれば、死んだ後のことなどどうでもいいと思っているのかもしれないが。
しかし、本当にそんなことが実現できた独裁者が果たしてどれだけいただろう。
独裁を受け継いだ者がいても、先代が積み上げた不平不満や恨みをコントロールすることに汲々とするだけだったりはしないか?
それどころか先代が積み上げた不平不満や恨みがついに爆発して代わりにぶつけられることになってしまったりしないか?
そのような事態であることを窺わせるような事例は、人間の歴史上にも数限りなくあったのではないか?
人間の世代をまたいで観察を続けることができる吸血鬼にとっては当たり前のこととして得られる実感だった。
さらに、<徳>は世代を超えて受け継がれることは少ないが、逆に憎悪は容易く残り続け、それどころか濃縮されていくことが多くないだろうか?
その実感があればこそ、憎悪を蓄積させるのは結局のところ全体の収支で見るなら大きな損になるということも理解できる。
戦争という行為も、その後何十年、場合によっては何百年も遺恨を残し、『手を取り合い協力して事をなす』ということさえ容易にできない状況を作り出すのではないのか?
実際に、それによって話が進まないという状態を目の当たりにしていたりするのではないのか?
なるほど確かに、戦争になる以前からそういう状況であったり、そもそも戦争に至った原因がそれであったりということもあるだろう。<迷惑な隣人>とは手を取り合うことなどしたくないと考えるだろう。
だが、
『そもそもなぜ迷惑な隣人になってしまったのか?』
ということを考えると、思うところもあるのではないだろうか。
人間というのはとにかくそれで済まそうとする傾向がある。嘘でその場を取り繕うとするのも、暴力で手っ取り早く問題を処理しようとするのも結局はそれであろう。その先で何が起ころうと自分には関係ないと思っているのだ。
だから問題が根本的に解決されなかったり余計に拗れたりする。その場でムカついたからといって煽り運転などをして事故に至ったりするような事例など、その典型ではないだろうか。
『目先の感情を優先したことでその後さらに厄介なことになる』
という形で。
『他者を暴力で支配しようとする』などというのも、それが何を招くのかということについて考えていないからこそできることであろう。
独裁者などの場合はそれこそ、自身がその立場にいる間だけ上手くできれば、死んだ後のことなどどうでもいいと思っているのかもしれないが。
しかし、本当にそんなことが実現できた独裁者が果たしてどれだけいただろう。
独裁を受け継いだ者がいても、先代が積み上げた不平不満や恨みをコントロールすることに汲々とするだけだったりはしないか?
それどころか先代が積み上げた不平不満や恨みがついに爆発して代わりにぶつけられることになってしまったりしないか?
そのような事態であることを窺わせるような事例は、人間の歴史上にも数限りなくあったのではないか?
人間の世代をまたいで観察を続けることができる吸血鬼にとっては当たり前のこととして得られる実感だった。
さらに、<徳>は世代を超えて受け継がれることは少ないが、逆に憎悪は容易く残り続け、それどころか濃縮されていくことが多くないだろうか?
その実感があればこそ、憎悪を蓄積させるのは結局のところ全体の収支で見るなら大きな損になるということも理解できる。
戦争という行為も、その後何十年、場合によっては何百年も遺恨を残し、『手を取り合い協力して事をなす』ということさえ容易にできない状況を作り出すのではないのか?
実際に、それによって話が進まないという状態を目の当たりにしていたりするのではないのか?
なるほど確かに、戦争になる以前からそういう状況であったり、そもそも戦争に至った原因がそれであったりということもあるだろう。<迷惑な隣人>とは手を取り合うことなどしたくないと考えるだろう。
だが、
『そもそもなぜ迷惑な隣人になってしまったのか?』
ということを考えると、思うところもあるのではないだろうか。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい
凍星
キャラ文芸
幽霊が視えてしまうパティシエ、葉室尊。できるだけ周りに迷惑をかけずに静かに生きていきたい……そんな風に思っていたのに⁉ バーテンダーの霊能者、久我蒼真に出逢ったことで、どういう訳か、霊能力のある人達に色々絡まれる日常に突入⁉「オレは視えてるだけだって言ってるのに、なんでこうなるの??」霊感のある主人公と、彼の秘密を暴きたい男の駆け引きと絆を描きます。BL要素あり。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる