ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第六幕

美味しいです……!

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メイヴに見守られ、エイスネは取り敢えず落ち着くことができていた。

加えて、

「ヤギの乳だけど、飲む?」

改めて勧められて、

「はい……!」

コップ一杯のヤギの乳を一気に飲み干す。

「美味しいです……!」

決して声は大きくないものの、控えめではあるものの、静かに興奮した様子でメイヴにそう告げる。

「動物の乳って、吸血鬼にとっては血の代用品になるんだよ。だから、血の代わりに乳ばっかり飲んでる吸血鬼もいるくらい。だから十分に用意してあるから、好きなだけ飲んだらいいよ。血を飲むのは少し抵抗があるとしても乳なら気にならないでしょ?」

メイヴに言われてエイスネもハッとなる。

「そうなんですか? じゃあ……!」

表情が確かに明るくなった。吸血鬼になって血を飲むしかなくなったのだとすれば大変な後ろめたさも感じるものの、乳を飲んでいればいいとなれば、そこまでのことでもない気もしてくる。しかも、シチューも美味しかった。

「普通の食事も食べられるんですね……驚きました」

素直な感想が口をつく。そんなエイスネに対してメイヴはニヤリと笑みを浮かべつつ、

「まあね。そうじゃなきゃこんな風に人間と協力し合って活動するというのもなかなかできないんじゃないかな。吸血についても理解してくれる人間はたまにいるけど、決して多くはないから。

だけど、普段は普通に食事をすればいいってことになったら、別に人間に危害を加える必要もない程度の吸血で済むってなったら、理解を示してくれる人間もずっと増えるよ。

私も元は人間だから、人間の感覚もまだ少しは分かるんだ。なるべく人間とは仲良く行きたいと思うしね」

語ってみせた。

もちろん、言葉だけでは完全に信頼を得ることはできない。言葉だけならいくらでも取り繕うことができる。それは他でもない人間こそが実感していることだ。これまでの歴史上でも人間は数え切れないほどの嘘で他者を欺き陥れ害をなしてきただろう。その事実は揺るがない。

だからこそ、言葉で説明した上で、行動でそれが真なるものであると示していくのだ。だから、時間もかかる。手間もかかる。なかなか信じてもらえないこともある。それを承知した上で努力を重ねる他にない。その努力なしに信頼など成立しない。

エイスネからの信頼を獲得することもままならない。

今は互いに手探りの状態なのだ。メイヴはそれなりに経験を重ねてはきているものの、エイスネはこれまでの相手とはまた<別の存在>なのだから。これまでの経験だけで完全に対処できるわけではない。エイスネにはエイスネに適した接し方をしなければいけない。それはこうやって実際に接することで探っていくしかない。

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