ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
661 / 697
第六幕

ドート

しおりを挟む
「よろしく。私はドート。ドラム担当だ」

「私はカミラ。ベース担当。よろしくね」

ディマの仲間である二人はそう言って握手を求めてきてくれた。

「お、俺はイゴール。こっちはミハエルとアンナ。俺達は兄弟だ」

<仮の身分>とはいえイゴールもいくらかは慣れてきたみたいで、ある程度はスムーズにそう口にできるようになった。

握手を交わすと、ドートが、

「イゴールにミハエルにアンナか。スラヴ系かな?」

と問い掛けてきたけど、イゴールは、

「まあそんなとこかな」

と曖昧に答えた。これには、ドートもカミラも、

「ああ……」

的に察した様子に。あの辺りはいろいろあるからね。複雑な事情が絡んでるんだと考えてくれたんだろう。だからそれ以上は踏み込んでこなかった。その代わり、

「あんたらもサンドラに世話になってるのかい?」

そう尋ねてきて、これには、

「て言うか、『サンドラの知り合いの世話になった』ってことかな。こっちに来たついでにサンドラに会って代わりに挨拶してくるってのもあるんだ」

今回の目的(建前)をイゴールは口にした。でもドートもカミラも、

「なるほど」

と納得してくれた。二人とも『サンドラは恩人』と言うくらいだからいろいろ事情を抱えてそうだ。

ドートというのは、<過剰な愛情>的なニュアンスと共に<毒>というニュアンスもあるのかな。

カミラはそれこそ<著名な女性の吸血鬼カーミラ>を連想させる名前だね。アイルランド人作家の作品に登場する。

それぞれそう名乗っていることにも意味がありそうだとも感じるけど、今は詮索はしない。話したいと思えば本人の方から口にしてくるだろうし。

と思ったら、

「あたしはさ、母親が異常に束縛してくるタイプでさ、十五になるまで友達も作らせてもらえなかったんだ。ドートって名乗ってるのは、その辺が由来かな」

ドートの方が早速、自分の身の上を語ってきた。きっと語りたい欲求があるんだろう。それを語ることで自分の境遇と折り合いを付けているのかもしれない。さらに、

「でも、十五の時に親が離婚して、あたしは父親に引き取られた。父親も母親の異常さを分かってたんだと思う。だから引き離そうとしてくれたんだ。なのに母親はあたしを取り返そうとして無茶なことをしてきてさ。その時に力になってくれたのが、ここを作ったばかりの頃のサンドラで、自分の部屋にあたしをかくまってくれたりもしたんだよ。父親は悪い人じゃないんだけど荒事には弱くてさ。

でもここだといろんなゴツいのもいるしね。母親が雇ったチンピラも追い払ってくれたりしたよ」

とも語ったんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ミネルヴァ大陸戦記

一条 千種
ファンタジー
遠き異世界、ミネルヴァ大陸の歴史に忽然と現れた偉大なる術者の一族。 その力は自然の摂理をも凌駕するほどに強力で、世界の安定と均衡を保つため、決して邪心を持つ人間に授けてはならないものとされていた。 しかし、術者の心の素直さにつけこんだ一人の野心家の手で、その能力は拡散してしまう。 世界は術者の力を恐れ、次第に彼らは自らの異能を隠し、術者の存在はおとぎ話として語られるのみとなった。 時代は移り、大陸西南に位置するロンバルディア教国。 美しき王女・エスメラルダが戴冠を迎えようとする日に、術者の末裔は再び世界に現れる。 ほぼ同時期、別の国では邪悪な術者が大国の支配権を手に入れようとしていた。 術者の再臨とともに大きく波乱へと動き出す世界の歴史を、主要な人物にスポットを当て群像劇として描いていく。 ※作中に一部差別用語を用いていますが、あくまで文学的意図での使用であり、当事者を差別する意図は一切ありません ※作中の舞台は、科学的には史実世界と同等の進行速度ですが、文化的あるいは政治思想的には架空の設定を用いています。そのため近代民主主義国家と封建制国家が同じ科学レベルで共存している等の設定があります ※表現は控えめを意識していますが、一部残酷描写や性的描写があります

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

30歳、魔法使いになりました。

本見りん
キャラ文芸
30歳の誕生日に魔法に目覚めた鞍馬花凛。 『30歳で魔法使い』という都市伝説を思い出し、酔った勢いで試すと使えてしまったのだ。 そして世間では『30歳直前の独身』が何者かに襲われる通り魔事件が多発していた。巻き込まれた花凛を助けたのは1人の青年。……彼も『魔法』を使っていた。 そんな時会社での揉め事があり実家に帰った花凛は、鞍馬家本家当主から思わぬ事実を知らされる……。 ゆっくり更新です。 1月6日からは1日1更新となります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~

桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。 両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。 しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。 幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。

処理中です...