ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第六幕

あんたがヘレナじゃないのかよ?

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「……って、そんなことがあったらしいと私をクランにしたヴァンパイアから聞いたんだけど、それがどこまで本当なのかは正直分からない。私が気が付いた時には、ずっと遠く離れた外国だったからね」

「ええ!? あんたがヘレナじゃないのかよ? なんか話の流れ的にそんな感じだったじゃん!」

イゴールが思わずそう声を上げると、クラーラ(メイヴ)は、

「あはは、そんな風に聞こえちゃった? だったらごめん。だけど私も、ただただ巻き込まれた側だからね。決して主役じゃなかったんだよ。でも、そのおかげで人間を殺したりせずに済んだ。もしあの時点で人間を殺したりしてたら、私も相当おかしくなってたと思う。ヴァンパイアになったことでそういうのも平気になっていくんだとしても、なんかちょっと違う気がするしさ」

明るくそう笑い飛ばした。

そんな彼女に少し腑に落ちないものも感じつつ、イゴールはそれ以上に気になることを問い掛ける。

「でもまあそれはいいとしてもよ、そのヘルメスっていうのは結局どんな奴だったんだ?」

その疑問は当然だろう。<ヘルメスなる人物>は実際には存在しなかったと言われても、今のイゴールにはまだピンとこないみたいだし。

それに対してクラーラ(メイヴ)は、

「だから要するに、彼の傍についていたメイドの女の子がヘルメス自身で、人間達がヘルメスだと思っていたのは、彼女が見せていた幻だっていうだけだよ。それ以上でもそれ以下でもない」

さらりと応えて。するとイゴールも、

「だからつまりその<メイドの女の子>が吸血鬼で、あんたのことも吸血鬼にしたってことだな?」

自分が感じたことを改めて口にする。

「平たく言えばそういうこと。猛毒を飲んで普通なら助からなかった私を彼女はクランにすることで助けてくれた。だけどそれは決して同情心とかじゃなくて、ただの気まぐれ。なんとなくそうしてくれたっていうだけ」

「なんだそりゃ……」

「だよね意味分かんないよね。だけど彼女はそういうヴァンパイアだったんだよ」

苦笑いを浮かべながらクラーラ(メイヴ)が肩を竦めると今度はセルゲイが、

「その<メイドの少女の吸血鬼>については、私達吸血鬼の間でも実は詳しいことが伝わっていない存在なんだ。いつからいて、どのような経緯を辿ってきたのかも、まるで分かっていない。もっとも、そのような生き方をしている吸血鬼も珍しい存在じゃないけどね」

補足説明を行ってくれた。セルゲイの言うとおりだった。僕達吸血鬼も、エンディミオンの父親の例もあるように、すべてが一枚岩じゃない。むしろそれぞれが好き勝手に生きてるのが本来の姿だ。その上で、『こうした方がより都合がいい』ということで協力もするというだけでしかないというのも事実なんだ。

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