ショタパパ ミハエルくん

第六幕

反魔女狩り

こうして＜反魔女狩り＞の運動は広がりを見せたが、それは同時に、

『疫病を広める魔女を倒さなければいけない！』

と強く信じる者達との間での衝突も生み出していった。魔女が疫病を広めていると信じる者達からすれば彼らはそれこそ＜魔女の手先＞だっただろう。

すると、魔女を撃ち滅ぼす決意を示すとして青いハンカチを身に付けるようになって、青いハンカチを身に付けていない者は魔女に与する者として叱責されたり、時には暴力を振るわれたりするようにさえなった。

もちろん、＜反魔女狩り派＞の人間達はこれにも反発し、

「罪もない者達を魔女に仕立て上げリンチを加える非道な行いを正当化する悪辣な輩だ！」

と強く非難した。

しかし、『魔女はいない』というのは事実でありつつ、ペストをはじめとした疫病が脅威となっていることもまた事実であり、『疫病を広めないように気を付けなければいけない』という考え方には一定の合理性もあるため、どちらの主張も正しい部分と正しくない部分があって、一方的に『どちらが正しい』という言い方ができない難しい状態となっていた。

加えて、当時はまだ医学も十分に発達しておらず、＜証拠＞となるような科学医学に裏打ちされた物証も提示できなかったことがより一層、状況の混乱に拍車をかけたのだろう。

証拠はないが双方共に『自分達こそが正しい』と考えているので、ただただ思い込みだけで突き進むしかできない。

そんな中でも、ヘレナは、父親に命じられるままに暗殺を実行した。今回は、魔女狩りを強力に推進しようとしていた町の有力者だった。

しかもその人物は、魔女狩りを推し進める一方で少女を金で買い自分の欲求を満たしているという者でもあった。

もちろんその事実は公にはなっていないものの、少女を買うためのルートはあり、そのルートを運営している者達は、金さえ積まれればなんでもするような連中であった。だからその人物に関する情報も、金さえ積まれれば容易く売る。

そういう裏商売的なものも『信用が第一』とは言われるものの実際には抜け道などいくらでもあり、

『自分達は関与していないという体ていを取った』

上で、情報を横流しもするのである。情報が流れたルートを追及されてもとぼけてしまえばどうとでもなるとして。

そしてこの時は、ヘレナが買われた。＜売り物＞として潜入したのだ。これによりその人物の別荘にまんまと入り込んで、楽しみのための用意をしているところを、細く長い針で耳の穴から脳を抉り、まるで眠っているかのような死を与えたのだった。