ショタパパ ミハエルくん

第六幕

今から彼女自身に話を

「彼女がメイヴ。先ほどの話に出てきた本人だよ」

セルゲイがイゴールに彼女を紹介する。これに対してメイヴの方は、

「今はクラーラと名乗ってるけどね」

少しいたずらっぽくウインクしながら、メイヴ改めクラーラは告げた。彼女は三十代くらいの知性的な女性だった。

そして僕と悠里ユーリと安和アンナを見て、

「え…と、あなた達がミハエルとユーリとアンナかな？」

今度は子供っぽいあどけない笑顔になってそう口にする。

「はい。僕がミハエル。彼が悠里、彼女が安和です」

僕は応えながら右手を差し出し、握手を交わす。続けて、悠里と安和も。

「あなた達のことはセルゲイから聞いてる。特に、ユーリとアンナについてはダンピールでありながらヴァンパイアとも人間とも友好的だって。本当に素晴らしい」

さらに今度はまるで学者のように知的好奇心をたたえた目で見つめてきた。とても表情豊かな女性だと分かった。

その彼女はイゴールにも視線を向けて、

「ところで、こちらは？」

尋ねてくる。これには、

「僕のクランのイゴールです」

僕の方から紹介する。

「え…あ、どうも……」

こういう時の振る舞いを満足に学んでこれなかったイゴールは、美麗なクラーラを前にして戸惑うばかりだった。それに対してもクラーラは、

「初めまして。クラーラよ。このホテルのスタッフで、あなた達の専従の担当者」

右手を差し出して握手を求めながら自己紹介を。

「あ、は、はい……！」

イゴールも慌てて手を差し出し、握手に応じる。彼の体温と脈拍がさあっと高まるのが分かってしまう。

「よろしくね、イゴール」

「はい、俺の方こそよろしく……！」

すっかり舞い上がっている彼に、セルゲイは、

「今から彼女自身に話を聞くことにしよう。そのために来てもらったんだ」

と告げた。その上で、

「きっと君にとっても参考になる話が聞けると思う」

とも。けれどクラーラ自身は、

「まあそれよりもまずは食事にしましょう。堅苦しい話にはしたくないしね」

ふわりと微笑みながらワゴンに乗せられていた料理をテーブルに並べ始めた。これは彼女の仕事なので、僕達はただ見守るだけだ。

そうして料理を並べ終えると、

「それでは、次の仕事ね。何を話せばいいのかしら？」

クラーラも席に着きながら問い掛けてくる。これにセルゲイも、

「そうだね。イゴールはテロリストに育てられた。君の境遇に似ていると思う。なので、君がクランになるまでの経緯を話してあげてもらえるだろうか」

穏やかに告げる。そう聞いた瞬間に、クラーラは悲し気な目をして、

「そう……あなたも……」

口にしたのだった。