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第六幕

それもいいかもな……

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「森の土に埋もれるって、それでどうやって食事なんかできるってんだ?」

さすがにエドマンドにはメアリーの言っていることが理解できなかったようだ。言葉としてはもちろん分かる。分かるが、意味が頭に入ってこない。

するとメアリーは改めて、

「それを言ったら人間の血を一口飲んだだけで活力を得られるってのもおかしいでしょうが。詳しい理屈はまだよく分かってないけど、『そういうもの』なんだよ。ヴァンパイアっていうのは。土に埋もれてると、とにかく土地のエネルギーが吸収できんの」

きっぱりと言い切った。彼女の言うとおり、原理も道理も判明はしていないものの経験則として『そういうもの』であることだけは分かっている。なので現状ではそうとしか説明できないのだ。

「お……おう、そうか……」

これにはエドマンドもそう応えるしかなかった。応えるしかなかったが、取り敢えずそういうことなんだと自分に言い聞かせる。

と同時に、

『森の土に埋もれてるだけでいいのか……』

そんなことを思う。それがとても気になった。

『なんも考えずに土に埋もれてるだけで生きてられんなら、木や草みたいに生きられんなら、それも悪くないかもな……』

とも。

『人間の世界なんて、つらいことばっかりじゃねーか……俺達みたいなのは死ぬまで貴族共にいいようにされるだけだしな……』

などということも考えてしまう。その点、木や草は面倒なことを考えなくても生きていられるのが羨ましかった。子供の頃にすでにそんなことを思ってしまっていたことを思い出す。

日が昇ると同時に起きて仕事を始め、日が暮れて疲れ切って、粗末な食事をして泥のように眠る。自分の両親もそうやって生きていた。そして自分もそうやって生きている。働いて働いて働いて、なのに今回の飢饉だ。何もいいことがなかった。

幼馴染と結婚したのも、多少悪からず思っていた相手が近くにいたというだけで、強くそれを望んだわけでもない。淡い気持ちを寄せていたメアリーは貴族に金に買われて自分の前からいなくなった。

子供を迎えられたのは嬉しかったが、その息子二人も死んだ。それどころか、その死肉を食って自分は生き延びた。

思いがけずメアリーとは再会できたものの彼女はヴァンパイアになっていて、自分も同じくヴァンパイアになった。人間ではなくなってしまった。ならもう、人間のような生き方などする必要もなくなったのではないのか?

木や草のように生きられるというのなら、

『それもいいかもな……』

改めて思ったのだった。

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