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第六幕
メイヴの献身
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「エイスネ……」
彼女の担当となったメイヴが、ベッドで眠り続けるエイスネの髪をそっと撫でていた。まるで幼い娘の寝顔を見守る母親のようなあたたかな眼差しで。
実際、赤ん坊の世話をする母親に等しい振る舞いをしている。なにしろ、眠り続ける彼女の世話をしているというのは、生理現象のすべての世話をしているということでもあるからだ。
この時代の<オムツ>などは、現代のそれと違って単なる布や綿なので、十分に吸収されずシーツなども汚してしまう。だからオムツだけでなくシーツなども同時に交換する必要が出てくる。オムツなどの性能が上がっても大変なそれの負担は、想像以上のものがあるだろう。
けれど、メイヴは不満一つ口にすることなくエイスネの傍にいた。その献身には驚かされるに違いない。
ただ同時に、これはメイヴ自身にとっても必要なことでもあった。それゆえに彼女は続けることができたというのもある。
そうして彼女が見守っている中で、
「ん……んん……」
エイスネが顔を歪ませて小さく呻いた。おそらく夢を見ているのだろう。これもよくあることだった。むしろ夢でうなされない事例の方が少ないくらいに。
「……」
メイヴは改めてエイスネの頭をそっと撫でた。そうして頭を撫でてくれる者が確かに今もいることを伝えるために。
すると、エイスネは涙を流しながらも少し落ち着いた様子になった。これを、エイスネが眠ってから何度も何度も繰り返している。その間、メイヴは仮眠しか取っていない。しかもエイスネがうなされるとハッと起きて頭や体を撫でるのだ。介護もしながら。
並大抵のことではないだろう。けれど彼女にはそれができてしまう。
そこに、部屋の前に誰かが経つ気配。ノックをしなくても彼女にはそれが察せられて、
「ちょっと待っててね……」
小さく声を掛けてから立ち上がり、そろりとドアを開けた。
「補給です……どうぞ」
それこそ目の前にいても聞こえるか聞こえないかという小さな声で告げたのは、スタッフらしき若い女性だった。その女性に、
「ありがとう……」
メイヴも応えながら女性の首筋に頭を寄せていく。そして唇を当てた瞬間、
「ん……」
女性が頬を染めながら小さく声を上げた。吸血だ。彼女もヴァンパイアであるがゆえに。しかし、メイヴが吸血していたのはわずか数秒であった。ほんの一口分くらいだろうか。
けれど、メイヴの目に生気が漲る。たったそれだけの吸血でも十分だということなのだろう。
そして彼女に血を吸わせた若い女性は、確かに人間であった。
彼女の担当となったメイヴが、ベッドで眠り続けるエイスネの髪をそっと撫でていた。まるで幼い娘の寝顔を見守る母親のようなあたたかな眼差しで。
実際、赤ん坊の世話をする母親に等しい振る舞いをしている。なにしろ、眠り続ける彼女の世話をしているというのは、生理現象のすべての世話をしているということでもあるからだ。
この時代の<オムツ>などは、現代のそれと違って単なる布や綿なので、十分に吸収されずシーツなども汚してしまう。だからオムツだけでなくシーツなども同時に交換する必要が出てくる。オムツなどの性能が上がっても大変なそれの負担は、想像以上のものがあるだろう。
けれど、メイヴは不満一つ口にすることなくエイスネの傍にいた。その献身には驚かされるに違いない。
ただ同時に、これはメイヴ自身にとっても必要なことでもあった。それゆえに彼女は続けることができたというのもある。
そうして彼女が見守っている中で、
「ん……んん……」
エイスネが顔を歪ませて小さく呻いた。おそらく夢を見ているのだろう。これもよくあることだった。むしろ夢でうなされない事例の方が少ないくらいに。
「……」
メイヴは改めてエイスネの頭をそっと撫でた。そうして頭を撫でてくれる者が確かに今もいることを伝えるために。
すると、エイスネは涙を流しながらも少し落ち着いた様子になった。これを、エイスネが眠ってから何度も何度も繰り返している。その間、メイヴは仮眠しか取っていない。しかもエイスネがうなされるとハッと起きて頭や体を撫でるのだ。介護もしながら。
並大抵のことではないだろう。けれど彼女にはそれができてしまう。
そこに、部屋の前に誰かが経つ気配。ノックをしなくても彼女にはそれが察せられて、
「ちょっと待っててね……」
小さく声を掛けてから立ち上がり、そろりとドアを開けた。
「補給です……どうぞ」
それこそ目の前にいても聞こえるか聞こえないかという小さな声で告げたのは、スタッフらしき若い女性だった。その女性に、
「ありがとう……」
メイヴも応えながら女性の首筋に頭を寄せていく。そして唇を当てた瞬間、
「ん……」
女性が頬を染めながら小さく声を上げた。吸血だ。彼女もヴァンパイアであるがゆえに。しかし、メイヴが吸血していたのはわずか数秒であった。ほんの一口分くらいだろうか。
けれど、メイヴの目に生気が漲る。たったそれだけの吸血でも十分だということなのだろう。
そして彼女に血を吸わせた若い女性は、確かに人間であった。
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