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第六幕
今までの自分じゃない
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「その実験で、お前はヴァンパイアになっちまったのか……」
メアリーの<告白>を受けて、エドマンドは重苦しく口にした。対して彼女は、
「まあね……しかも結局、よく分からなかったみたい……
最初の一日目は、それこそ牙を刺して出てきた血を舐める程度だった。二日目は一口吸った。三日目は二口吸った。そんな感じ。その実験の時以外は、私は地下室に閉じ込められてた。頭がおかしくなりそうだったよ」
とは言ったものの、そこでフッと苦々しい笑みを浮かべて、
「まあ、部屋自体は綺麗だったし食事ももらえたけどさ。しかも、肉まで出るんだよ。肉なんて小さい頃に食べたっきりだったから、なんか変な感じになっちゃったな。美味すぎて」
そんなことも。
「そ……そうか……」
エドマンドとしてもどう応えていいのか分からなくて戸惑う。そこにさらに、
「しかもさ、四日目、五日目ってなってきたらさ、私の方も血を吸われるのが怖くなくなってきて、と言うか、正直なところ待ち遠しくなってたりもした。だって気持ちよかったし、しかもその後で食事が出たから。別に死ぬわけじゃないってのも分かって、ヴァンパイアになっちゃってるような感じもなくて、血を吸われる以外は酷いこともされなかったしさ」
とも打ち明ける。これにはエドマンドの方が苦笑い。
「なんだそれ……」
やや呆れたような口ぶりになる。しかし、
「だけどさ、そのヴァンパイアのことはやっぱり怖かったんだよ。ヴァンパイアだから当然なんだけど、顔とか目付きとか、人間とは思えなかった。すっごいハンサムなのはハンサムでも、こう、作り物みたいで。それだけはぜんぜん慣れなかったなあ……」
メアリーがやや怯えたような表情で言った時には、
「そうか……」
沈痛な面持ちに。さらに、
「それからも血は吸われたんだけどさ、吸われんのは平気になったんだけどさ、でもある時、分かっちゃったんだよ。自分がいつの間にかヴァンパイアになっちゃったってのが。あなたも分かるでしょ? 自分が今までの自分じゃないって感じ」
そう問い掛けてきた。とは言えこれには、
「ああ……言われてみればそんな気もするけどよ。俺はここ何年もジャガイモしか食ってこなかったせいかなんか体の具合がおかしくて、しかも去年からはジャガイモさえまともに食えなかったから、完全に具合が悪くなってて、どう違ってんのかよく分かんねえんだ」
正直な印象をエドマンドは返す。
「あ……そうなんだ……」
今度はメアリーが戸惑う番であった。
メアリーの<告白>を受けて、エドマンドは重苦しく口にした。対して彼女は、
「まあね……しかも結局、よく分からなかったみたい……
最初の一日目は、それこそ牙を刺して出てきた血を舐める程度だった。二日目は一口吸った。三日目は二口吸った。そんな感じ。その実験の時以外は、私は地下室に閉じ込められてた。頭がおかしくなりそうだったよ」
とは言ったものの、そこでフッと苦々しい笑みを浮かべて、
「まあ、部屋自体は綺麗だったし食事ももらえたけどさ。しかも、肉まで出るんだよ。肉なんて小さい頃に食べたっきりだったから、なんか変な感じになっちゃったな。美味すぎて」
そんなことも。
「そ……そうか……」
エドマンドとしてもどう応えていいのか分からなくて戸惑う。そこにさらに、
「しかもさ、四日目、五日目ってなってきたらさ、私の方も血を吸われるのが怖くなくなってきて、と言うか、正直なところ待ち遠しくなってたりもした。だって気持ちよかったし、しかもその後で食事が出たから。別に死ぬわけじゃないってのも分かって、ヴァンパイアになっちゃってるような感じもなくて、血を吸われる以外は酷いこともされなかったしさ」
とも打ち明ける。これにはエドマンドの方が苦笑い。
「なんだそれ……」
やや呆れたような口ぶりになる。しかし、
「だけどさ、そのヴァンパイアのことはやっぱり怖かったんだよ。ヴァンパイアだから当然なんだけど、顔とか目付きとか、人間とは思えなかった。すっごいハンサムなのはハンサムでも、こう、作り物みたいで。それだけはぜんぜん慣れなかったなあ……」
メアリーがやや怯えたような表情で言った時には、
「そうか……」
沈痛な面持ちに。さらに、
「それからも血は吸われたんだけどさ、吸われんのは平気になったんだけどさ、でもある時、分かっちゃったんだよ。自分がいつの間にかヴァンパイアになっちゃったってのが。あなたも分かるでしょ? 自分が今までの自分じゃないって感じ」
そう問い掛けてきた。とは言えこれには、
「ああ……言われてみればそんな気もするけどよ。俺はここ何年もジャガイモしか食ってこなかったせいかなんか体の具合がおかしくて、しかも去年からはジャガイモさえまともに食えなかったから、完全に具合が悪くなってて、どう違ってんのかよく分かんねえんだ」
正直な印象をエドマンドは返す。
「あ……そうなんだ……」
今度はメアリーが戸惑う番であった。
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