ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第六幕

うん、大丈夫そうだね

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「うん、大丈夫そうだね。清潔にさえしてれば疫病を広めることもないと思う」

メイヴはエイスネの体を拭き終えるとそう口にした。それから用意した着替えをてきぱきと手際よく彼女の体に着せていく。決して華美ではないが実用的で清潔なそれだった。着心地もとてもいい。前の服は洗濯さえする余裕がない状態だったのが長く続いたのもあり、汚れが染みついてゴワついてさえいたのだ。

「……気持ちいい……軽い……」

それをまとったエイスネ自身が思わずそう口にするほど違いは顕著だった。『軽い』というのも、前の服は実際に汚れが付き過ぎて重量が増していたというのもある。新しい服が特別なものというわけではないのだ。

ただ同時に、全体のシルエットとしてはサイズが合っていないこともあってややだらしない印象になっているだろうか。若干、大きすぎるのだ。とは言え、さすがに状況が状況なだけにそこまでは対処できなかったのだろう。

「うん、ちょっと大きいけどこれで我慢してね」

メイヴがやや苦笑いを浮かべつつもそう口にすると、

「はい……」

エイスネも、申し訳なさそうにしつつも頷いた。サイズが合わないのは彼女の所為ではないものの、何となく収まりが悪いのだろう。

そんな彼女を、メイヴはそっと包み込むように抱き締め、

「ようこそ、私達の診療所へ。生きていてくれてありがとう。仲間が増えて嬉しいよ」

穏やかに声を掛けた。

「……」

エイスネは戸惑いつつも、ようやくホッとした表情も見せた。見せた上で、また涙をあふれさせる。自身の両親のことがまた思い出されてしまったのだろう。

「うん、泣いていいよ。いくらでも泣いていい。たくさんたくさん泣いて、気がすむまで泣いて。ここではそれができるから。それができるように用意された場所だから……」

メイヴも、見た目はまだ二十歳前後という印象であるにも拘らず、エルビスやドロレスと変わらない器を感じさせた。不思議な女性だった。

さりとて、この時のエイスネにはただただ安心して泣ける場所という印象しかなかっただろうが。

そうしてまた泣いていると、

「くくくう……」

小さな動物の鳴き声のような物音がした。

「ごめんなさい……!」

泣き腫らした目をしたエイスネが慌てて自分の腹を手で押さえる。それに対してもメイヴは、

「まあ、あんなスープだけじゃ足りないよね。今度はシチューにしようか」

言って、

「ごめん、シチューをお願い」

声を上げた。しかしメイヴが視線を向けた先には誰もいなかった。なのに、少しすると、ドアがノックされたのだった。

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