ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第六幕

メイヴ

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エイスネのように助けを必要としている者がいる。ほんのわずかな遅れで助かる命が助からない場合がある。そう思うと、じっとしてなどいられない。今は動くことが必要なのだ。

だからエルビスは、エイスネの引き渡しが確実に行われたのを確認したことで、スタッフから渡されたソーセージを挟んだだけのパンを手にして、先ほど乗っていたのとは別の、十分に休息と餌を与えられた馬に跨り、走り出した。馬上で食事にしつつ次の村に向かうのだ。

一方、エイスネについては、

「彼女はメイヴ。あなたの担当の看護師よ。これからは彼女があなたをサポートする」

ドロレスに連れてこられた、エプロンを身に着け<クラシカルメイド>を思わせる格好をした二十歳前後と思われる若い女性を紹介され、

「……」

怯えたように不安そうに恐る恐る手を差し出した。その手をそっと握り、メイヴと呼ばれた女性は、

「よろしくね、エイスネ。あなたのお母さんにはきっと敵わないでしょうけど、私もあなたを支えるから」

彼女の前で膝を着きながら穏やかにそう告げた。

「……」

柔和そうなメイヴの雰囲気に、エイスネも少しホッとした様子が見えた。自分を助けてくれたエルビスがいなくなったことで不安もあったが、それが和らぐのも感じたようだ。

そしてエイスネだけじゃなく、同じ部屋にいた中年男性と彼女よりは少し年上と思しき若い女性にも同じようにスタッフが担当として就き、それぞれを部屋へと連れて行った。

彼女らがいた建物は、どうやら古いアパートメントだったようだ。このところの危機的な状況もあり入居者も集まらず空き部屋だらけになっていたのを借り上げ、保護した者達の仮住まいとして利用しているらしい。

おそらくは単身者用だったのだろう。部屋は決して広いとは言えなかったものの、ベッドは二つ設えられていて、二人部屋になっていた。

「ここがしばらくの間、私とあなたの部屋になるから」

メイヴがエイスネを招き入れながらそう口にする。その言葉の通り、保護した者と担当者が生活を共にするために用意された部屋だった。

決して<上等>とは言い難かったにせよ、少なくともエイスネが暮らしていた家よりは新しく清潔で整えられていた。だから彼女は躊躇ってしまった。自分がこんな立派な部屋を使っていいのかと戸惑っているようだ。

「遠慮は要らない。あくまで一時的なものだから。今回のことが落ち着いたら、あなたには改めて部屋を探してもらうことになるからね。それまでに自分の体と心を整えるための場所だよ」

メイヴはそう笑顔で語ったのだった。

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