ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第五幕

オレーナを死なせた俺への罰

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『俺は……どうすればいい……?』

問い掛ける彼に、僕は答える。

「人間としての記憶は持っていても、君はまだ、生まれたばかりだ。どうすればいいのか分からなくて当然だよ。そして、安和アンナにも勝てなくて当然なんだ。君はこれからたくさんのことを学んでいかなきゃいけない。吸血鬼として生きていくためにね。

大丈夫。それを教えてくれる者はいるよ。僕もその一人だし、君を眷属にした張本人だ。この子をこの世に送り出した張本人でもある。僕はその責を負う」

安和のことも手を差し伸べて示しながら、そう告げた。

すると彼は、いまさらながらに、

「え……?」

と呆気にとられる。そんな彼に安和は、

「ミハイルが私のパパよ」

腕を組んでソファーにふんぞり返ってニヤリと笑みを浮かべながら言った。さらに、

「言っとくけど、パパはあんたのお祖父ちゃんよりも年上だからね」

とも。

「マジか……? あっちの大人の方が父親じゃないのかよ」

<あっちの大人>。セルゲイのことが頭に思い浮かべられてるのが分かる。安和は何度か僕が父親であることを前提としたことを口にしていたけど、彼にはピンと来ていなかったようだね。

確かに、この国に入国する際の書類にはセルゲイが父親で、僕も悠里ユーリも安和も彼の子供ということにはなってるし、人間の常識からすればピンと来なくても当然だと思うけどさ。

「そういうことだよ。僕達吸血鬼の生涯は長い。だからたくさんの人間や吸血鬼と出会って、そしてたくさんの別れを経験する。その中には、とてもつらいものもある。僕も母を亡くした。父もおそらくもう亡くなってる。親しくなった人間達の多くも僕よりずっと先に亡くなった。それだけじゃない。ここにいる安和の母親である僕のパートナーも人間だから、僕は自分のパートナーについても最後を見送ることになるだろうね。それが、吸血鬼として生きるということなんだ」

淡々と語る僕に、イゴールは、

「俺も、そうなるのか……?」

改めて問い掛けてくる。

「うん。これから君も、オレーナだけじゃなく、数えきれないくらいの人間達を見送ることになるだろうね」

冷淡なまでに事実だけを告げる僕に、

「余計なことしやがって……」

彼は再び涙を流し始めた。そして、

「これが、オレーナを死なせた俺への罰ってことかよ……」

そう解釈したようだ。僕自身は必ずしもそれを意図したわけじゃないけど、彼の中で何かがすとんとはまるのが見えるようだった。

「罰……罰か……そうだよな…俺がバカだったばっかりにオレーナは死んだんだ……バカは罰せられて当然だよな……」

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