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第五幕

僕の言ってることを立証する羽目になる

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僕が眷属にしたイゴールが何らかの事件を起こすと、人間はすぐに、

『殺しておかなかったからだ!』

とか言うよね? イゴールを殺しておかなかった僕に責任があると。

なのに、親がこの世に送り出した子供が何か事件を起こしても、

『親に責任はない』

とか言うんだ。しかも、

『どんな人間に育つかは生まれた時に決まってる』

なんて言って。生まれた時にどんな人間に育つか決まっているなら、その子供をこの世に送り出した当人の責任じゃないの? そしてこう言うと今度は、

『生まれた時点じゃ、そんなの分かるわけないだろ!』

みたいに言って、とにかく『自分には責任はない』ということにしたがる。

『子供は、生まれた時点じゃどんなのに育つか分からないけど、テロリストを生かしておいたらまた犠牲者が出て当然だろ!』

とも言うだろうな。

眷属化し、吸血鬼となったイゴールが人間に危害を加えるかどうかは、それこそ分からないよ。なにしろ彼は人間じゃなくなったんだから。人間とはまったく違う存在になり、人間だった時のことはただの記憶になってしまったんだから。その記憶に囚われてしまうかどうかは、僕にさえ分からない。

それでも、彼が人間に危害を加えれば僕に責任があると考えるんだよね?

『可能性はあるけど実際にどうなるかは分からない』

という意味では、

『どんな人間に育つか生まれつき決まっているにも拘らず子供を生んでこの世に送り出す』

ことと変わらないはずなんだけどな。

でもね、実際には『どんな人間に育つか生まれつき決まっている』なんてことはないんだよ。<そういう傾向>はあるとしても、決まってるわけじゃない。

『そういう傾向のある者に、それを助長するような認識を与えると先鋭化する可能性が高まる』

というだけでしかない。

イゴールも同じ。

彼には確かに人間に対する強い負の記憶があるけど、それが彼の行いに直結するとは限らない。当たり前の話だよ。

それが直結すると考えるのは、目先の感情を自らの行いに直結させるタイプの人間だろうね。

だからむしろそれを言っている人間の方がリスクは高いだろうね。実際に、ネット上で誰かを傷付けるための行いをしてるんじゃないの? そしてそれを、

<他者を傷付けるための行い>

であることを認識せず理解せず、<相手の所為>にして自らの行いを正当化しているんじゃないの?

もしそうじゃないと言うのなら、目先の感情を優先して悪態を吐いたりするのはやめた方がいいだろうね。

でないと、僕の言ってることを立証する羽目になる。

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