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第五幕

自立もできない者が

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人間は、自立もできない者が権利ばかりを主張することを毛嫌いするんじゃなかったっけ?

この国のテロリストがやってるのがまさに、

『自立もできないのに自分の権利ばかりを主張する』

行いなんだ。そのための具体案も展望もないのに、とにかく、

『国を取り戻せば後は何とかなる』

という考えで行動してる。

本来なら、自分達でこの国を運営していくための土台作りをしっかりした上で大国に対して主張するべきなのに、順序をはき違えてるんだよ。

『自分達はその努力をしてきた! 大国側がその邪魔をしてるんだ! 裏で手を回して!』

みたいなことも言ってるらしいけど、いやいや、彼らが他国に持ち掛けた独立のためのアイデアが歯牙にもかけられなかったのは、

『見通しの甘すぎる経営戦略を並べ立てておいて銀行から融資を受けようとしている』

ようなもので、大国が裏で手を回すまでもなく相手にもされないようなものでしかなかったんだよ。あまりにも素人考えすぎて。

それで支援を求められるとか、相手側も困っただろうね。

そんな自分達の甘さを棚に上げて大国の陰謀だ工作だと憤っているんだから、手に負えない。

しかも、国を運営していくためのリソースである自国の市民すらテロの犠牲にしてるとなれば、自分で自分の首を絞めてるだけじゃないの?

なにしろ、数少ない有力企業のトップをテロで暗殺したりもしてるんだから。確かに大国側から仕事をもらっている企業ではあったけど、それでも、仮にも独立採算を成立させてたんだ。そのトップを失ったことでかなり経営が傾いたらしい。

人間が人間を殺すというのは、こういうことなんだよ。

自分にとって都合が悪い相手でも、能力そのものはとても高かったりもする。

『敵にそれを利用されないようにするため』

と言えば聞こえはいいかもしれないにしても、独立した後で力になってくれる可能性のあった人材を失ったことはマイナスでしかない。

何しろその企業のトップは、

「いつか我々自身がこの国を盛り立てていかなければなりません」

と口にしていたそうだし。テロリストにしてみるとそれさえ『口先だけだ』ということだったらしいけど、本当にそうだったのかな?

それをどうやって確認したのかな?

ただただ目先の感情だけで考えて気に入らない相手を殺しているだけじゃないとなぜ言えるんだろう?

自分の目先の感情ばかりを優先して、自分達が活かすべきリソースを次々と台無しにしているような者達に、国の運営なんか本当にできると思うの?

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