ショタパパ ミハエルくん

第五幕

仮にもテロに加担しようと

「そんな……！」

ポケットからリモコンを出して何度も何度も少年は押したけど、やっぱり反応はなかった。

ただ、電波式は、たまたま同じ周波数の電波を拾っただけで誤作動する可能性もあるから、先に完全に無力化しておかないといけない。セルゲイが魅了チャームを使って少年の動きを封じて、ブルゾンの前を開けると、プラスチック爆弾の塊をいくつも吊り下げたベストが見えた。

けれどセルゲイは慌てることなく制御装置を見付け出して抜き取り、雷管に繋がっていたリード線をすべて切り取った上で制御装置をバラバラにちぎってポケットにしまった。

これでもうそのプラスチック爆弾はただの粘土と同じだ。

その少年についても、警察に連絡して保護してもらう。とは言え、実際にプラスチック爆弾を身に付けてるわけだから軍の爆発物処理班が出動する騒ぎになった。ただ、セルゲイが無力化してあることを伝えていたのもあって、実際に無力化されてるのが確認されると、その場でベストが脱がされて爆発物処理用のコンテナに封入され、一気に緊張感が解けた。

これで爆弾については一安心となっても、少年の方は、仮にもテロに加担しようとしていたわけだから、何らかの罪には問われるかもしれない。

だけどそれについてはあくまでも人間自身の問題であって、僕達にはどうすることもできない。

それでも一応、事情を聞かれるために警察には同行する。いつもの流れに、安和もうんざりとした様子だけれど、セルゲイの傍を離れたくないから付き合うことになった。

実際に警察署に向かうと、そこから先は単なる＜お役所仕事＞になるというのもあって、セルゲイもまたそこで魅了チャームを使い、事務処理だけで済ませた。

事情聴取も、セルゲイ自身が慣れたものだから、警察側にとって必要な情報について要点をかいつまんで話し、調書の作成についても逆に指導して最短時間で終わらせたって。

元々、セルゲイはテロについてはまったく無関係なただの通り掛かりだからね。提供できる情報もそもそもほとんどない。

一時間ほどで解放されると、そのままホテルに向かって夕方まで休む。

だけど、目を覚ましてテレビを点けると、空港からそう遠くないバス停で自爆テロがあったことが報道されていた。本当は空港と連携して行うはずのものだったんだろうな。

それでも、実行犯を含む十五人が亡くなり、百人近い重軽傷者が出たそうだ。

そして亡くなった被害者の中には、三歳の子供もいたと。

本当に何をしているのか、僕には理解できないよ。