ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第五幕

テロが横行している国

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そんな国を後にして、僕達はまた次の国に行く。

もちろん次の国も、決して<理想郷>というわけじゃない。その国の犯罪発生率もとても高いからね。

そして、テロが横行している国でもある。

大国の支援を受けている政府に対して、

『自分達の国を取り戻す』

と、テロという形で<正義の戦い>を行なっているんだよ。

そう。他の国でも何度も目にしてきた構図だ。

大国側は『自分達の支援があればこそ国として存在し続けられている』と考えているし、それに対してテロで抵抗している者達は、『自分達の誇りや尊厳を踏みにじられている』と考えて、それを取り戻すべく戦っているつもりだし、どちらも、自分達にこそ正義があると考えて、双方ともに譲歩するつもりはまったくない。それをすでに何十年も続けている。

そういう国だった。だけどもうそんなことについては悠里ユーリ安和アンナもすっかり慣れてしまって、空港に着いても、油断なく周囲を窺っているだけで、平然としている。

すると、

「あいつ、なんか様子がおかしい」

悠里が、若い男性、と言うか明らかに十代半ばくらいの少年を見てそう口にした。

それに対してセルゲイも、

「そうだね。爆弾を体に巻いてる。自爆テロだ。しかも遠隔操作の」

その少年じゃなく、空港の外に視線を向けて言った。彼の視線の先に、スマホを持った男性の姿。しかも瞬間的に魅了チャームを使って、制圧する。離れていても、視線さえ合えば効果はあるから。視線を向けられていれば一瞬そちらを見てしまう人間の習性を利用すれば容易い。

一方、少年の方は、ポケットの中でリモコンを操作してるけど、それはただのフェイクだった。少年が土壇場で怖気づいた場合を想定して、もしくはそもそも信用してなくて、遠隔操作で自爆させるつもりだったんだろうな。

「え……? え……?」

少年は、悲壮な覚悟でスイッチを押したのに何も起こらなくて茫然としていた。

だから安和が、

「そのスイッチはフェイクだよ。あんたは利用されてただけ」

怒ったような表情で睨み付けながら声を掛けてた。

「!?」

彼女の言葉に少年はギョッとなる。そこにセルゲイが、

「君を利用していたテロリストは無力化したよ。今、警察が向かってる」

警察からも追われていたテロリストだったことでその場で通報したんだ。まったく知られていない者だったらさすがに警察も動いてくれないけど、指名手配されているとなれば話は別だからね。

その所為で空港に近付けなかったこともあって、少年を使ったのかもしれない。子供なら大人よりは怪しまれないから。しかも十代半ばくらいなら、外国に行っていた家族を迎えに一人で空港に来ても不自然じゃないというのもあるのかもね。

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