ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第五幕

自分が矛盾していることにどうして目を瞑るんだろう

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改めて言うけど、

『子供が成人したら親には責任はない』

と考えるなら、成人した子供に親が自分の考えを押し付けて干渉するのはおかしいはずだよ? ましてや子供の生き方に口出しするなんて、酷い矛盾だよね。

そんなことをしておいて子供が反発したら<親不孝>だなんて、干渉しなければ反発もされなかったんじゃないのかな?

ましてや、

『両親を見ていて幸せそうに思えなかった』という感想を持つことさえ許さないなんて、子供を何だと思ってるんだろうね。

年長者さえ敬われていれば、家庭さえ守られていれば、それで万事上手くいく。と考えることがいかに破綻しているか、その国が周辺の国々からどう思われているかが物語っていると思うんだけどな。

たとえどんな人間であろうと年長者でさえあれば敬われるなら、何も努力して立派な人間にならなくても、ただ次々新しく人間が生まれてくれば敬ってもらえるようになるなら、努力なんてする必要はなくなってしまうんじゃないの?

人間は自分に甘く、易きに流される生き物だ。それは人間自身がはるか昔から気付いていて、様々な形でそんな自らを諫めようとしてきているはずなのに、どうしてそれを無視するんだろう。『年長者を敬え』と言いつつ、その年長者であるはずの先人達の言葉には耳を傾けないんだから、不思議だよね。自分が矛盾していることにどうして目を瞑るんだろう。

年長者を敬うように説いた先人達も、

『努力しなくても年齢さえ重ねれば敬ってもらえるようになる』

ことを目的にしてそれを説いたのかな? 僕にはそうは思えないんだけどな。

何より、ことさら『年長者を敬え!』と口にしなくちゃいけないというのは、つまり、

『そう言わなければ年長者を敬おうという意識がそもそもない』

からじゃないの? 実際には<差別>が根深い社会だからこそ、

『差別はいけない!』

みたいなことを声高に叫ばないといけなかったりするのと同じで。

普段から他者を敬うということが自然に行われている社会なら、わざわざ<年長者>と対象を限定する必要もないんじゃないのかな?

だから本質的にはそれだけ、

『他者を敬うという感覚が根付いていない』

ことをむしろ物語ってるとしか思わないけど?

この時の父親の振る舞いこそが、『他者を敬うという感覚が根付いていない』何よりの証拠だと感じたよ。こんな往来の真ん中で怒鳴り声を上げてそれを耳にした他者がどういう気分になるかということさえ考えられない人間のどこに、

<他者を敬う感覚>

があると言うの?

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