ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第五幕

残念な気分になるのは事実かな

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そうして僕達が次にやってきた国は、ムジカ達が暮らしてた国とは違っていわゆる<先進国>の一つとも言われてる国だった。

ただ、正直なところ、その考え方そのものは果たして<先進国>のそれなのかな? と疑問に感じないでもない国でもある。

それ自体は僕が口出しすることじゃないんだけど、そこでいきなり出くわした事例を考えると、正直なところ残念な気分になるのは事実かな。



その日、僕達は空港で入国手続きを済ませて、いつものようにホテルに入った。そこでまず日が傾く頃まで寛いで、それから今回は、セルゲイの知人と面会するために知人宅に向かう。

けれどその途中、タクシーを待っていると、

「私はもう、家に帰らないから! ほっといて!」

「なにを言ってるんだ! それが親に対する口の利き方か!」

「あなたももういい歳なんだからちゃんと結婚して子供を生みなさい! 歳をとってからじゃ子供も産めなくなるんだからね!」

往来の真ん中で大声でそんなやり取りをしてる人間達が。

どうやらレストランで食事でもしながら話をしていた親娘のようだ。でもその口ぶりからすると、娘に結婚を迫った両親に対して感情的になってレストランから出てきたのを、両親が追いかけてきた感じのようだね。しかも双方共にかなりエキサイトしていて、ここが往来の真ん中だというのを失念してるみたいだ。

「結婚結婚って! ぜんぜん幸せそうじゃない夫婦を生まれた時からずっと見ててそんなものをしたいと思うようになるわけないじゃん!!」

腕を掴んでくる父親の手を振りほどきながら娘がそう口にすると、

「いい加減にしろ!!」

父親は拳を握りしめて娘の頬をガツンと殴りつけた。

これはいけない。これは完全に<暴行罪>だ。何しろ父親は、地面に倒れた娘に蹴りを入れようとしたんだ。だからセルゲイが、

「それ以上はいけません。ただの親子ゲンカじゃ済まなくなる」

二人の間に割って入った。そんな彼に対して父親は、

「なんだお前は!? 親子の話に勝手に入ってくるな!!」

と声を荒げるけど、当然、そんなものにセルゲイが怯むわけもなく、

「これは<話>ではありませんね。<暴行>です。たとえ親子でも立派に法に触れる行為ですよ。ましてや倒れている相手を蹴るというのは、命にも係わる行為ですから」

父親の前に立ちはだかって告げた。けれど父親はまったく取り合う様子もなく、

「ガイジンに何が分かる! 邪魔だ! どけ!!」

さらに暴言を。だけど、明らかに見上げるほどの身長差がある相手に、口だけは勇ましいながらも完全に腰が引けてるのは明白だった。

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