ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第五幕

破滅に至る道は自分で選びたい

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アオが以前、

『自分が破滅する道しか先にないのにカルト宗教から抜け出せないのはなぜ?』

的な疑問を持っていたことがある。僕はそれについて、

「自分が破滅する道しか先にないことを危惧するかどうかというのは、そもそも生きてる限りはいずれ<死>という結末しかないんだからそれを恐れる人間にとっては<破滅に至る過程>こそが大事なのかもしれないね」

と応えさせてもらった。

そうだ。生きている限りは最後はいつか必ず死ぬ。<死>を<破滅>だと考える人間にとっては、

『どうせ最後は破滅するんだから』

ということになるんだろうな。そう考えればこそ、

『破滅に至る道は自分で選びたい』

的な心理が働いても何も不思議じゃないと僕は感じるんだよ。

『<甘く魅惑的な嘘>に騙されたまま破滅を迎えたい』

と考える人間がいても当然なんじゃないかな。そしてこの国の人間達が刹那的で享楽的で自分本位で身勝手なのも、『どうせいつかは死ぬんだろ?』という荒んだ気持ちが先に立っている可能性は高い気がする。

だから、

『<死という破滅>が結末として用意されているのならそこに至るまでいかにいい目を見るか』

ということが重要になってしまっているんだろうな。

だけど僕はそれについては否定的な立場を取らせてもらう。<死という破滅>自体は僕達吸血鬼でさえ逃れることができないものだ。僕の母が生涯を閉じたみたいにね。あくまで人間よりは時間の余裕があるというだけでしかない。

そんな僕がたとえ、『そこに至るまでいかにいい目を見るか』を重視するとしても、それが他者を蔑ろにし虐げるものであっては、ただ苦しみと怨嗟を撒き散らすだけだとしか感じないよ。

『<いい目>というものをどう捉えるか?』

という話にしても、アオと巡り合い、悠里ユーリ安和アンナ椿つばきを迎え、互いの存在を大切にすることで穏やかな気持ちでいられることこそが、

<僕にとってのいい目>

なんだ。これなら他の誰かを蔑ろにする必要もないし虐げる必要もない。むしろ、僕達の周りにいる者達のことも敬わなければそれは成立しないんだよ。

『すべての者を慈しみ救う』

なんてことは僕にだってできない。でもね、『蔑ろにしない、虐げない』だけならそんなに難しいことじゃないはずだよ?

これを『難しい』と感じるのなら、それは自分を甘やかしたいからだ。自分ばかりを優先して甘やかしたいから、そう感じるだけだよ。自分ばかりを甘やかしたいと考える人間同士が、結局、諍いを起こす。

違うの?

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