ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第五幕

吸血鬼である僕なら

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そんなマデュー達のことを、僕は、三日、四日と見守っていた。木の実を届けながら。人間だとすぐに探せる範囲内のそれを取り尽くしてしまうとしても、吸血鬼である僕なら半径数十キロでも余裕だ。

母も、僕のすることを黙って見守ってくれている。

『あなたが選んだことです。最後まで見届けなさい』

その言葉は、僕のこういう行動についても含んだものだと感じていた。

見た目こそ幼いけど、この頃はまだ十歳にもなってなかったけど、僕だって吸血鬼だ。だから人間よりはたくさんの事ができる。人間にはできないことができる。吸血鬼としての力を使えば、マデュー達だって守れると思ってた。

守れるはずなんだ。

ところで、この時の僕が、悠里ユーリ安和アンナよりも実年齢は下だったのに姿は五歳くらいだったのは、当時の僕がいた環境が原因だった可能性はある。たくさんの諍いの空気の中で早く強くならなきゃいけなかったからというね。

吸血鬼は、自分の身が自分で守れるようになるくらいまでは急激に成長するけど、それ以上は非常にゆっくりとした成長速度になるという特性がある。危険が多い環境だとそれだけ早く成長するんだ。

周囲には吸血鬼も結構いたから。その中で比較すれば幼い僕はやっぱりとても弱かったから、本能的に早く強くならなきゃというのはあったかもしれない。

だからこそ、『もうそれなりに強くなっている』という思い上がりはあった気がする。

実際、僕はマデュー達を守れていた。彼女は亡くなった人達から遺品を奪う仕事自体は止めなかったけど、食べ物自体は僕が届けてる分だけで間に合っていたし、彼女も、それまでよりは必死になって遺品を漁ってる感じじゃなかった。少しは気持ちに余裕があったみたいだ。

そうしているうちに近くでの戦闘は終わり、戦線が大きく移動したのが、確認できた。

それを知ってか知らずか、マデュー達は、崩れそうな粗末な小屋だけど、四人で体を寄せ合って、それなりに穏やかに暮らしていけてた。

「神様が僕達を助けてくれてるんだね」

僕が届けた木の実を食べながらトゥーヤが笑顔でそう口にする。

「そうかもね……」

マデューは少し苦笑いを含んだ感じだけれど、最初に見た時よりはずっと柔らかな表情になってそう応えた。

後の二人も、かなり表情が穏やかになった気がする。特にフーリは何か話そうとしてか、

「……」

口を動かそうとしたりも。この様子なら、遠からずまた喋れるようになるかもしれない。

そんな四人の様子に、僕もホッとするものを感じてた。

そして人間達の部隊が新たに展開してきて、配給も始まった。

だからもう、僕の助けはいらないと感じたんだ。

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