ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第五幕

けれどこの時の僕は

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トゥーヤ、フーリ、アダの三人にパンを与えたマデュー自身は、空腹を抱えたまま水だけを飲んで休んでた。わずかに実を付けた庭の野菜にも手を付けず。トゥーヤとフーリとアダのために残しておこうとしたんだろうな。

だから僕は、夜のうちに近くの林に入って、人間ではなかなか見付けられそうにない場所に残されていた木の実などを集めて、マデュー達のところに届けた。

本当はこんなことをしても、他にも同じように苦しんでいる子供がいるからそのすべての子供達を助けられないのならただの自己満足に過ぎないことは今なら分かるよ。そして、自己満足に過ぎないことを承知の上でそれをすることだってできる。けれどこの時の僕は、何とかマデュー達を助けたいと思ってしまって、後先とか考えていなかった。

母が敢えて口出ししてこなかったから、できることをしようと考えて。

「マデュー! マデュー! 見て!」

朝、自分達の枕元に木の実が山盛りになっていたことに気付いたトゥーヤが声を上げた。

「え…? なんで……?」

マデューはまさかの出来事に唖然としてたけど、すぐにハッとなって、

「まさか……?」

小さく口にした。自分の手を引いた僕のことを思い出していたみたいだね。そして僕が勝手に木の実を置いていったんだと察したようだ。

それでも、

「食べていい?」

声を上げたトゥーヤに対しては、

「うん、いいよ。でも、食べ過ぎておなか壊さないようにゆっくりとよく噛んで食べてね」

と告げた。それを受けてトゥーヤとフーリとアダは木の実を食べ始める。<ナッツ>と呼ばれるタイプの木の実がほとんどだから油分が多いし、一度にたくさん食べると消化不良を起こすかもしれないからね。それにしっかりと噛むことになるからその分だけ満足感もあるだろうし、加えて量としても四人では一度に食べきれないだろうなというだけあったから、マデューも、ためらいがちながらも食べてくれた。

翌日も、同じように木の実を届ける。

野菜とかも届けようかとも思ったんだけど、もし村の他の住人に見咎められたりしたら盗んできたものだと疑われる可能性もあったから、畑では収穫できない木の実とかだけを採集して。

そしてマデュー達も、他の住人に見られたら盗られるかもしれないということで用心して、服とかに隠し持って、そして外では食べないようにしていた。

そうしているうちに、フーリは、失語症を患っているらしくて『喋れない』のが分かってきた。表情も暗いから、相当なことがあったんだろうと推測できる。アダについては、かろうじて喋れるというだけという感じか。

さらには、服を着替えた時に見えた、マデューの体の傷。明らかに暴力によって意図的に付けられたそれの痕だと分かった。

誰に付けられたものかまでは分からないけど、ここまでのことは大人でないとできないだろうな。

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