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第五幕
マスターキー
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そうして管理事務所にいた男三人を無力化。さらには、モーテルの従業員についても、どの程度まで人身売買に関与してるかは分からないけど、拘束していく。
隠密行動は、それこそ僕達吸血鬼の十八番だ。だけどその時、僕の耳に人間の呻き声が届いてきた。
管理室から最も遠い部屋だ。だからすぐには気付かなかった。部屋の中には五人分の心音と呼吸音。大人が三人と十歳以下の子供のそれだと分かった。しかも、大人二人は呻き声を上げている。加えて、呼吸も弱ってる。一刻の猶予もない。
そこで僕は、鍵が掛かったドアを、警察や軍が突入の際に錠前を破壊するために用いる<マスターキー>よろしく<四本貫手>でドアノブごと錠を突き破って開けて部屋に侵入。間取りは他の部屋を確認した際に頭に入っていたからまず全体を見渡せる位置に移動し、状況を確認した。
するとそこには、ベッドの上で気を失っている五歳前後の子供が二人と、縛られた上に頭から袋を被せられて床に転がされている両親らしき男女、そして、見張り役らしい、椅子に座った中年女性。たぶん、両親を始末する担当の人間がくるまで見張ってるのが役目なんだろうな。
僕がドアを突き破った物音で怪訝そうに頭を向けたその中年女性を椅子ごと床に引き倒して、状況が掴めず唖然としてる状態のまま他の連中と同じように拘束した。そしてタオルで猿轡を噛ませ、声も上げられないようにする。
この間、約二秒。
その後、両親の拘束を解く。どうやら頭から被せられて首のところで縛られていたのがきつすぎて窒息寸前だったようだ。もっとも、犯人側からすればおそらく両親はそのまま殺害する予定だっただろうから、別にそれでもかまわなかったんだろうけど、部屋の中で死なれたら失禁等で後の処理が大変だっただろうに。もしかすると拘束した者がまだ不慣れで、加減をわきまえていなかったのかもしれない。
そんなことを考えながら、
「州軍がもうすぐ到着します。素直に指示に従ってください。下手な動きをすると犯人と間違われて撃たれるかもしれません。気を付けて」
なるべく低い声で、敢えて頭の袋は取らずに話し掛けた。もちろん、首の部分は緩めた上に袋にも穴を開けて呼吸を確保してからだけど。すると父親らしき男性が、
「子供達は……! 子供達は無事ですか!?」
ぜいぜいと荒い息をしながら問い掛けてくる。それに対しては、
「はい。呼吸も心音も異常ありません。眠らされてるだけですね。ただ、薬物で眠らされているようなので、病院に搬送されるように手配します」
告げたのだった。
隠密行動は、それこそ僕達吸血鬼の十八番だ。だけどその時、僕の耳に人間の呻き声が届いてきた。
管理室から最も遠い部屋だ。だからすぐには気付かなかった。部屋の中には五人分の心音と呼吸音。大人が三人と十歳以下の子供のそれだと分かった。しかも、大人二人は呻き声を上げている。加えて、呼吸も弱ってる。一刻の猶予もない。
そこで僕は、鍵が掛かったドアを、警察や軍が突入の際に錠前を破壊するために用いる<マスターキー>よろしく<四本貫手>でドアノブごと錠を突き破って開けて部屋に侵入。間取りは他の部屋を確認した際に頭に入っていたからまず全体を見渡せる位置に移動し、状況を確認した。
するとそこには、ベッドの上で気を失っている五歳前後の子供が二人と、縛られた上に頭から袋を被せられて床に転がされている両親らしき男女、そして、見張り役らしい、椅子に座った中年女性。たぶん、両親を始末する担当の人間がくるまで見張ってるのが役目なんだろうな。
僕がドアを突き破った物音で怪訝そうに頭を向けたその中年女性を椅子ごと床に引き倒して、状況が掴めず唖然としてる状態のまま他の連中と同じように拘束した。そしてタオルで猿轡を噛ませ、声も上げられないようにする。
この間、約二秒。
その後、両親の拘束を解く。どうやら頭から被せられて首のところで縛られていたのがきつすぎて窒息寸前だったようだ。もっとも、犯人側からすればおそらく両親はそのまま殺害する予定だっただろうから、別にそれでもかまわなかったんだろうけど、部屋の中で死なれたら失禁等で後の処理が大変だっただろうに。もしかすると拘束した者がまだ不慣れで、加減をわきまえていなかったのかもしれない。
そんなことを考えながら、
「州軍がもうすぐ到着します。素直に指示に従ってください。下手な動きをすると犯人と間違われて撃たれるかもしれません。気を付けて」
なるべく低い声で、敢えて頭の袋は取らずに話し掛けた。もちろん、首の部分は緩めた上に袋にも穴を開けて呼吸を確保してからだけど。すると父親らしき男性が、
「子供達は……! 子供達は無事ですか!?」
ぜいぜいと荒い息をしながら問い掛けてくる。それに対しては、
「はい。呼吸も心音も異常ありません。眠らされてるだけですね。ただ、薬物で眠らされているようなので、病院に搬送されるように手配します」
告げたのだった。
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