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第四幕

言い方の問題

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僕が淹れたコーヒーを口にしながら、アオは言う。

「つくづく、『言いたいことも言えない世の中とかおかしい』とか言いながら誰かが愚痴をこぼすと叩く風潮って、なんなんだろうね。<親ガチャ>って話もそうじゃん。それを口にしてる本人は『言いたいことを言ってる』だけでしょ? 『言いたいことも言えない世の中とかおかしい』って言うんだったらなんで言っちゃいけないの?

もし<言い方の問題>って言うんだったら、その<親ガチャ>って言葉を使ってる当人を、<自分では努力もしないで親の所為にしてる甘ったれ>と決め付けてこき下ろすのもおかしいじゃん。それこそ『言い方が悪い』ってもんじゃないの? だから結局、自分だけが言いたいことを言いたいように言いたいだけっていうのがバレちゃってるんだよ」

それに対して悠里ユーリも、

「そうだよね。<ガチャ>って言葉の定義を論点にして『子供はガチャを回してるわけじゃないから<親ガチャ>という言い方はおかしい』とか言ってる人もいるけど、それはただの揚げ足取りだと僕も思うんだ。問題の本質はそこじゃないんじゃないかな。どうして<親ガチャ>なんてことを言いたいと考えるのか?って部分について考えないと何も始まらないって気がする」

だって。すると安和アンナが、

「私はどっちかって言ったら<親ガチャ>って言い方は気に入らないけどね。なんかママやパパのこと馬鹿にされてるみたいな感じはする」

とも言った。母親や兄に迎合するんじゃなくて、ちゃんと自分の意見を口にしてくれる。それはとても大事なことだろうな。そして、

「そういう意味で『<親ガチャ>って言葉はよくない』って感じるのは分かるし、そう感じるのを否定はできないよ。でもさ、<言い方>を論点にするなら、<親ガチャ>って言葉を使う人を貶めるような言い方だってするのはおかしいよね? それなのに、『<親ガチャ>って言葉を使うのはダメ』で、『<親ガチャ>って言葉を使う人を貶すのはいい』みたいなことをしてるから、何にも説得力がないんだよね。しかも、自分でそれを理解しようともしない。指摘すると余計にムキになるだけ。自分がそうなんだから<親ガチャ>って言葉を使う人だって同じようにムキになるだけなんだよ。どうしてそれを理解しようとしないの?

だからやっぱり、自分だけが一方的に言いたいことを言いただけ、一方的に責めたいだけ、一方的に罵りたいだけ、っていうのが透けて見えちゃうから正論にさえならないんだよ」

アオは安和の言葉を受け止めた上でそう応えるんだ。

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