462 / 697
第四幕
昼間からリビングで
しおりを挟む
アオと唇を重ねた時、
「あ~はいはい、お熱いことで」
と声が聞こえてきた。さらに、
「安和、それは野暮ってものだよ」
という声も。安和のと悠里が起きてきたんだ。僕はその気配を察してたけど、アオはさすがに気付いてなくて。
「おほほほほ♡ じゃあ、私は仕事に戻るから~」
言いながらそそくさとリビングを出て行った。
「やれやれ。そんな照れなくてもいいのに」
安和は腕を組みながら首を振る。
「ははは。これは手厳しいな」
僕は笑顔でそう口にする。<夫婦の時間>を邪魔された形にはなったけど、別にそれを不快には思わない。ここは安和の家でもある。
人間には、
『ここは自分が用意した家だ! そこに住まわせてやってることに感謝しろ!』
的なことを言うのがいるけど、僕にはその感覚は理解できない。ましてや自身の子供に対してそれを言う親がいることが不思議で仕方ない。自分の勝手で子供をこの世に送り出しておいてそれを言うの? 親が子供を養育するのは、
『勝手にこの世に送り出したという行いを贖う』
だけの行為だよ? 親は自身の行いを贖わなくちゃいけない。それだけの話なんだよ。子供を家に住まわせるのは、
『住まわせてやってる』
わけじゃないよ。
<自身の行いを贖うための方法の一つ>
というだけでしかない。
『子供本人に承諾を取ってこの世に送り出した事実はない』
その現実とも向き合えない<甘ったれ>が大きな口を叩くのは、不快だな。
少なくとも僕は安和や悠里や椿に事前に承諾を取って迎えたわけじゃないんだから、安和や悠里や椿がこの家にいること、この家の中で自由に振る舞えることを保障するのは、僕が負うべき責任を果たしてるだけでしかない。
<夫婦の時間>が欲しいなら、夫婦の寝室に鍵をかけてこもればいい。少なくとも皆が集まるリビングですることじゃないよ。その程度の節度も守れなくて子供に<節度>なんて教えられるわけないじゃないか。
ましてや夜こそが吸血鬼やダンピールにとっては活動時間。人間でいえば『昼間からリビングで』ってことでもあるからね。
一方で、安和も悠里も僕とアオの仲の良さは理解してくれているから、嫌悪感を向けてくることもない。ただ、自分の両親が目の前であんまりにもイチャイチャしてるのを見るのはいたたまれないと思ってるだけだ。
それに配慮するくらいは、大人としては当たり前だよね?
「ココアでも飲むかい?」
僕が声を掛けると、
「うん。ありがと」
「ああ、僕は自分で紅茶を淹れるよ」
安和と悠里はそれぞれ応えたのだった。
「あ~はいはい、お熱いことで」
と声が聞こえてきた。さらに、
「安和、それは野暮ってものだよ」
という声も。安和のと悠里が起きてきたんだ。僕はその気配を察してたけど、アオはさすがに気付いてなくて。
「おほほほほ♡ じゃあ、私は仕事に戻るから~」
言いながらそそくさとリビングを出て行った。
「やれやれ。そんな照れなくてもいいのに」
安和は腕を組みながら首を振る。
「ははは。これは手厳しいな」
僕は笑顔でそう口にする。<夫婦の時間>を邪魔された形にはなったけど、別にそれを不快には思わない。ここは安和の家でもある。
人間には、
『ここは自分が用意した家だ! そこに住まわせてやってることに感謝しろ!』
的なことを言うのがいるけど、僕にはその感覚は理解できない。ましてや自身の子供に対してそれを言う親がいることが不思議で仕方ない。自分の勝手で子供をこの世に送り出しておいてそれを言うの? 親が子供を養育するのは、
『勝手にこの世に送り出したという行いを贖う』
だけの行為だよ? 親は自身の行いを贖わなくちゃいけない。それだけの話なんだよ。子供を家に住まわせるのは、
『住まわせてやってる』
わけじゃないよ。
<自身の行いを贖うための方法の一つ>
というだけでしかない。
『子供本人に承諾を取ってこの世に送り出した事実はない』
その現実とも向き合えない<甘ったれ>が大きな口を叩くのは、不快だな。
少なくとも僕は安和や悠里や椿に事前に承諾を取って迎えたわけじゃないんだから、安和や悠里や椿がこの家にいること、この家の中で自由に振る舞えることを保障するのは、僕が負うべき責任を果たしてるだけでしかない。
<夫婦の時間>が欲しいなら、夫婦の寝室に鍵をかけてこもればいい。少なくとも皆が集まるリビングですることじゃないよ。その程度の節度も守れなくて子供に<節度>なんて教えられるわけないじゃないか。
ましてや夜こそが吸血鬼やダンピールにとっては活動時間。人間でいえば『昼間からリビングで』ってことでもあるからね。
一方で、安和も悠里も僕とアオの仲の良さは理解してくれているから、嫌悪感を向けてくることもない。ただ、自分の両親が目の前であんまりにもイチャイチャしてるのを見るのはいたたまれないと思ってるだけだ。
それに配慮するくらいは、大人としては当たり前だよね?
「ココアでも飲むかい?」
僕が声を掛けると、
「うん。ありがと」
「ああ、僕は自分で紅茶を淹れるよ」
安和と悠里はそれぞれ応えたのだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる