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第四幕
人間という生き物の怖さなんだね
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椿に添い寝しているうちに、悠里と安和も眠ってしまった。
せっかくなので僕も仮眠をとる。
すると、気付いた時にはもう三時間経っていた。仮眠のつもりがしっかり眠ってしまったんだ。時間はまだ深夜一時過ぎだけど。
吸血鬼にとっては夜こそが活動時間なのに、さすがに少し疲れていたのかもね。悠里と安和もまだ寝ている。だからこのまま寝かせておこうと思った。半年ぶりの自宅に加えて、椿と一緒だったことで安心してしまったんだろう。
そっとリビングに戻ると、
「ありがと♡」
アオがコーヒーを飲みながら笑顔を向けてくれた。椿と添い寝してたことだった。
「コーヒー飲む?」
「うん、いただくよ」
言葉を交わして、僕もソファに座る。
「お疲れ様」
「ううん。アオの方こそ、椿のこと、ありがとう」
「あはは♡ 面倒見てもらってたのは私の方だけどね。ホントにダメな母親だと思う」
「そんなことないよ。もしそうだったら、椿があんなに笑顔じゃいられないと思う」
「そう言ってもらえると嬉しいな。だけど、ミハエルだって悠里と安和のこと、ありがと。いろんなことを学んできたんだなってすごく感じる」
「確かに。二人はとてもいろんなことを学んでくれたな。人間と折り合いを付けて生きることがどういうことかを、大事なことをね」
「ビデオ通話で話してるだけでも、二人がどんどん成長してるのを感じた。私だけじゃ教えられないことをたくさんね」
「うん。それは間違いない。二人にとっては楽しいことばかりじゃなかったけど、それ自体が人間の世界というものだから。必要なことだったよ」
「吸血鬼は長生きな分、人間よりもたくさんのことを知れるから、逆にたくさんのことを知っておかなきゃいけないんだね」
「そうだね。僕達は大きな力を持ってる。それを制御するためにはそれだけ多くのことを知らなきゃいけない。知らないままで力を使うのはとても危険だ」
「本当は人間もそのはずなんだけどね。個人の力はたかが知れてるけど、集団になるととんでもない力を発揮するし」
「まったくだね。先の大戦でも、まさか本当に核まで使えるようになるとは思わなかった。もっと先だと思ってたから」
「そこが人間という生き物の怖さなんだね」
「ああ、そういうことだと僕も思う。大変な力を手にしてしまった以上は、人間も知らなきゃいけないね。<神>に頼って責任を擦り付けてるわけにはいかないんだ。人間が責任を擦り付けている神は存在しない。人間の振る舞いは人間が背負わなきゃいけないんだ」
せっかくなので僕も仮眠をとる。
すると、気付いた時にはもう三時間経っていた。仮眠のつもりがしっかり眠ってしまったんだ。時間はまだ深夜一時過ぎだけど。
吸血鬼にとっては夜こそが活動時間なのに、さすがに少し疲れていたのかもね。悠里と安和もまだ寝ている。だからこのまま寝かせておこうと思った。半年ぶりの自宅に加えて、椿と一緒だったことで安心してしまったんだろう。
そっとリビングに戻ると、
「ありがと♡」
アオがコーヒーを飲みながら笑顔を向けてくれた。椿と添い寝してたことだった。
「コーヒー飲む?」
「うん、いただくよ」
言葉を交わして、僕もソファに座る。
「お疲れ様」
「ううん。アオの方こそ、椿のこと、ありがとう」
「あはは♡ 面倒見てもらってたのは私の方だけどね。ホントにダメな母親だと思う」
「そんなことないよ。もしそうだったら、椿があんなに笑顔じゃいられないと思う」
「そう言ってもらえると嬉しいな。だけど、ミハエルだって悠里と安和のこと、ありがと。いろんなことを学んできたんだなってすごく感じる」
「確かに。二人はとてもいろんなことを学んでくれたな。人間と折り合いを付けて生きることがどういうことかを、大事なことをね」
「ビデオ通話で話してるだけでも、二人がどんどん成長してるのを感じた。私だけじゃ教えられないことをたくさんね」
「うん。それは間違いない。二人にとっては楽しいことばかりじゃなかったけど、それ自体が人間の世界というものだから。必要なことだったよ」
「吸血鬼は長生きな分、人間よりもたくさんのことを知れるから、逆にたくさんのことを知っておかなきゃいけないんだね」
「そうだね。僕達は大きな力を持ってる。それを制御するためにはそれだけ多くのことを知らなきゃいけない。知らないままで力を使うのはとても危険だ」
「本当は人間もそのはずなんだけどね。個人の力はたかが知れてるけど、集団になるととんでもない力を発揮するし」
「まったくだね。先の大戦でも、まさか本当に核まで使えるようになるとは思わなかった。もっと先だと思ってたから」
「そこが人間という生き物の怖さなんだね」
「ああ、そういうことだと僕も思う。大変な力を手にしてしまった以上は、人間も知らなきゃいけないね。<神>に頼って責任を擦り付けてるわけにはいかないんだ。人間が責任を擦り付けている神は存在しない。人間の振る舞いは人間が背負わなきゃいけないんだ」
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