ショタパパ ミハエルくん

第四幕

これからもそれを続けたいの？

＜決して自分が負けるはずのない相手だから強気に出られる人間＞

を量産して何がしたいのか、僕には分からない。散々それで嫌な思いをしてきたんじゃないの？　力にものを言わせて弾圧して支配して搾取して。これからもそれを続けたいの？　自分が弾圧して支配して搾取できる側に回れる保障なんてなにもないのに？　それを目指すのなら、自分が弾圧されて支配されて搾取される側になる覚悟を持たないとおかしいと思うけど？　

現に今、自分達が虐げてきた側から反撃を受けてるよね？　性別、人種、美醜、そういったもので虐げてきた相手から同じことをされようとしてるんじゃないの？　自分がしてきたことをされる覚悟があるから虐げてきたんじゃないの？

『やられたらやり返す』

という考えを是としてきたこともそうだよね？　やってきたことをやり返されてるだけなんじゃないの？　それで今さら被害者ぶるの？

もっとも、僕は、吸血鬼という第三者の立場で見てると、『やられたらやり返す』は、結局また、立場が入れ替わって『やり返される』ことになるから、決して賢い手法だとは思わないんだけどね。

僕達吸血鬼も、人間から＜化け物＞扱いされて排除の対象にされてきた。実際、人間の犠牲になった仲間もいる。本気で人間を攻撃するつもりの吸血鬼は、人間の力じゃまず倒せない。だから人間に殺された吸血鬼というのは、ほとんどが人間と敵対するつもりのなかった者達だというのが事実なんだよ。本気で抵抗する気がなかったから、そこを突かれた。

それを人間達は、

『凶悪な怪物を退治した』

と喧伝しただけなんだ。人間にとって本当に危険だった吸血鬼を倒したのは、ほとんどがダンピールなんだそうだ。自分の生みの親である吸血鬼に虐げられたり、ダンピールであることで人間から虐げられたりして、それを、自分を生みだした吸血鬼に対して憎しみをぶつける形で＜ハンター＞となったダンピールにね。

僕は幸い、さくらのおかげで助かったけど、エンディミオンに命を狙われたのは、僕がただ吸血鬼だったからというだけで、個人的に彼から恨まれる理由なんて何もなかったんだよ。僕は、意図して人間の命を奪ったことはないし、ましてやダンピールと敵対するつもりなんてまったくなかった。

それなのに命を狙われた。

『やられたらやり返す』

『復讐は必要』

そう考える者達が、彼に自分の行動の根拠を与えてしまった。

本当に迷惑な話だよ。『やられたらやり返す』『復讐は必要』と考える者は、勝手な解釈で＜やり返す相手＞＜復讐する相手＞を決めるからね。