ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第四幕

一日で十の二十四乗という数に

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確かに僕達<吸血鬼>は、数の上では人間に負けてるかもしれない。けれど、<じつ>の部分である<生物としての強さ>は、その数の力を十分に圧倒できるものなんだよ。

だって、眷属を増やしていくことですぐさまその数をひっくり返すことができるんだから。

三日もあればそれができるよ? その三日の間に、残された人間は足並みを揃えて対処できるの? しかも最初の一日はおそらく異常事態を察するのがやっとだろうね。そこから二日程度で何ができるの?

吸血鬼に吸血されて眷属になった者が次の眷属を生み出せるようになるまで早くて数分。遅くても数時間。平均一時間と仮定するなら、僕が十人の人間を眷属化したら、一人の眷属がさらに十人を眷属にしたら、計算上は、一日で十の二十四乗という数になるよね? 

もっとも、そんな風に計算通りに行くわけじゃないだろうから、三日と仮定されてるんだ。それを人間はどうやってひっくり返す?

しかも、政治や軍の要職に近い人間の親族を眷属化すれば、政治や軍の中枢を落とすことだって難しくない。要職に就いてる人間は警護されててもその家族は警護されてても、<家族の知人>までは警護してる? 家族が勤めてる職場の同僚や学校の同級生はどう? そして要職に就いてる者でも、自分の家族に対してはガードも下がるよね。

吸血鬼の存在を把握してる各国首脳も、防ぎようがないことを理解してるから、吸血鬼の存在を黙認し、敵対しないことを選択したんだよ。

新種のウイルスがパンデミックを起こしたことからも分かるんじゃないの? あの程度の感染力のウイルスでさえ人間は完全にはコントロールできない。それが現実なんだよ。吸血鬼が本気で眷属化を図ればそれを止める術はないし、人間にその術がないことを吸血鬼の側も承知しているのにそれを実行しないというのは、吸血鬼は人間を本気で敵視するつもりがないというのが分かるよね?

相手を一方的に蹂躙できる軍事力を持っている隣国が攻め入ってこない状況を思い浮かべれば分かりやすいかもね。蹂躙するつもりなら簡単にできてしまうのにしてこないというのがどういうことかってさ。

自分達を簡単に蹂躙できる力を持った隣国が穏当に接しようとしてるのにそれに対して挑発的な態度を取るのが、賢い者のすること? 賢いとまではいかなくても損得勘定ができる者なら分かるよね?

なるべくなら穏当に、可能なら友好的に接することを選ぶよね。しかも吸血鬼は人間を支配しようともしてない。プライドがどうとかいう問題でもないんだ。

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