ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
440 / 697
第四幕

生存競争を行う敵

しおりを挟む
ダンピールである安和アンナにとって人間は、

<別の種>

だ。だからこそ理解できない部分が出てくる。それをアオが補ってくれる。

安和アンナの言うことはもっともだと思う。だってさあ、人間以外の生き物で、年老いた親の世話をする生き物って、いる? 子離れの時に子供を追い出しておいてそれで『体が弱ったから自分を守れ』とか言われて子供が納得する? 子離れした後は、かつては親と子であっても、<生存競争を行う敵>になるわけじゃん。親が年老いて弱ったとなったら、それこそ叩き潰して縄張りとか奪うチャンスじゃん。<自然>ってそういうもんでしょ?

だけど人間は、自分が歳をとったら子供に世話をさせようとする。<育ててやった恩>とかいう虚構の概念をでっち上げて、弱った自分が子供から攻撃されないようにしようとするんだ。これだけでも人間って生き物がいかに自然に反してるかってのが分かるじゃん。

そういう意味じゃ、私は、歳をとってもみんなに守ってもらおうとは思ってないんだ。自分の力で生きていけなくなったら退場してもいいと思ってる。

でもさ、その一方で人間は、<自分にとって大切な相手>ってのを見殺しにはできない生き物でもあるよね。<自分にとって大切な相手>に危害を加えられたら復讐を考えずにいられない生き物でもあるよね。だから守ろうとする。子供にとって親が<守りたい相手>なら、まあ守ってもおかしくはないんじゃないの?

だからさ、『守ってもらいたい』と思うのなら、せめて<守りたいと思ってもらえる存在>でいる努力はしなくちゃいけないって思うんだよ。親が子供を守るのは、自分の勝手でこの世に送り出したことに対するいわば<尻拭い>だから子供がどうあれ自分の力で生きていけるようになるまでは守らなきゃとは思うけど、赤の他人の場合は、それも関係ないからね? 『自分が気に入らないから』なんてくだらない理由で誰かを傷付けようと躍起になってる奴なんて、なんで守ってやらなきゃいけないのさ? 誰かを傷付けようとするってことは、自分が誰かから傷付けられることも覚悟しなきゃおかしいよ。

イジメもそうだよね。『自分が気に入らないから』なんてくだらない理由で誰かをイジメようとするのなら、同じように『自分が気に入らないから』なんてくだらない理由で誰かからイジメられて当然じゃん。

でも、だからこそ、私はみんなに誰かを理不尽に攻撃するようにはなってほしくないんだよ。だってそれは<誰かから理不尽に攻撃されても仕方ない原因>を作るってことだからさ」

食後のコーヒーを口にしながら、アオは安和達にそう説くんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

江戸時代改装計画 

華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

処理中です...